此処にも一つ死骸がある。 いや、一つなんてもんじゃない。 それこそ無数に。 此処は都内の古びた四階建ての病院。 デスホスピタル。 外観は、一言で言うと最悪。 駐車場は常用車が十台が入れるほどしかなく、 入り口はゴミやタバコの吸殻が捨てられている。 さらに言うなら壁は黒ずみ、 あっちこっちに肉眼でわかるぐらいのひびが入っている。 窓は汚れ、拭いた後が一切ない。 内観は、一言で言うと最低。 受付には椅子がなく、みんな立って待ている。 廊下にはやはりゴミが散らかっている。 診察室のドアは開けるたびに、ギィィィィィィと音が鳴る。 もっと酷い所はドアがない。 病院に来ている人間も近くの人ばかり。 しかも、老人や赤ちゃん、そのお母さんだけ。 その誰もがしかたなくここに来ている感じに見える。 医者も白衣が黒ずみ、 診察用具も使いまわしながら使っている。 つまり洗われた形跡がない。 この病院は、どんなにしょぼくて、汚くても医療現場だ。 だというのに一切、清潔感がない。 他の病院をバカにしている、汚さ。 ここは、病院としての常識がない。 此処は病院ではない。 病院と言って良いものじゃない。 でも、こんな病院の三階にも産婦人科と書かれた部屋があった。 しかもこの三階のフロアの部屋や周り、壁は白く、綺麗でやけに清潔感がある。 この病院からは想像も出来ないくらいの場所だ。 実際本当に綺麗だったが、 このフロアが綺麗なのは、其処にいる医者があの女だったからかもしれない。 その女医は他の医者とは全然違う。 白衣は綺麗で汚れているところは一切なく、医者に似合わない茶髪で長髪。 しかも、ストレートで動くたびに綺麗になびく。 それにちゃんと名札を付け、使う診察用具もピカピカに光っている。 名札には、森 清子と書いてあった。 森は診察室からたくさんのカルテを持ち病室に移動する。 病室には所狭しと未熟児の赤ちゃんが入る透明の箱に、 一、二歳の子供たちが入れられている。 その子供たちには何の特徴もない。 未熟児って様子でもない。 どこかにひどい怪我を負っているわけでもない。 みんな気持ちよさそうに寝ている風にしか見えない。 すべての箱には名前と○週間目と書いた紙が貼られている。 森は一つの箱の前に立つ。 箱に四週間目と貼られた紙の付いた子は、 寝ているというより息がもうなく静かに寝ている感じだった。 森がその子の箱に手をかけ眺めていると病室のドアが開く。 其処に五人の子供が運ばれてきた。 運んできたナースたちは、 部屋にその子たちを運ぶと運ばれて来た子供たちの名前を読み上げた。 「新しい子供たちです。○○ ○、○ ○○、 鏡崎 仁、○○ ○、○○ ○、以上です。」 ナースは森に一礼して部屋を出て行こうとした時、 森は一人のナースを呼び止めた。 「あなた。すまないんだけどこの子を埋葬してあげて。」 森は手をかけ、眺めていた子を箱ごと動かし、ナースの前で止めた。 「・・・・・わかりました。」 ナースは箱の中の子を見て、箱を運び出した。 森の顔はとても悲しげだった。 森は新しく来た子供たちの顔を一人一人しっかりながめ箱を開ける。 運ばれてきた順番に森は子供たちの胸に手を当てていく。 眼を開けていた子供たちは次々に眠りにつき、 かわいい寝顔を浮かべる。 森はその子達の箱を閉め一言つぶやいた。 「・・・・・・・ごめんなさい・・・・・・・・・・・・・・・・。」

人は初め一つの母体から生まれた。 そこから何人もの人間が生まれた。 生まれた環境は同じでもそれぞれ違う人間が。 人は生まれながらにして平等ではない。 イケメンもいれば、ブサイクもいる。 これは、極端な例え。 それでもこれと同じようにこの世界には、特別な能力、 つまりアビリティ−を持った人間と 何の能力も持たない一般人と呼ばれる人間がいる。 能力を持った人間たちは外見、普通の人間となんら変わりないが、 身体能力や視力や聴覚がずば抜けている。 それだけでは普通の人間でも頑張れば何とかなりそうだが、 普通の人間には、超えられないものがある。 それは、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・能力。 人によってその能力はさまざまだが、 ほとんどの能力は、人に使っていいもんじゃない。 その能力の使い方はいたってシンプル。 ただ、相手に触れるだけ。 その他にもいろいろあるが、簡単に言えば、 外見は普通、中身は超人と考えてもらえばいい。 此処はそんな住人がいる世界。 人はそれにきづかず、 ただいつもとかわらない日々を暮らしていく。 その中、政府は真っ先にこのことに気づいた。 政府はこの能力者たちを利用すべく、 能殺機関SAPなる機関を作り、能力者を利用することにした。 SAPとは特別な能力者の集団で 普通の人間で罪を犯した者をこの世から強制除去する集団である。 どんな理由であろうと、どんな状況であろうと、 どんな人間であろうと正義の名の下に消す。 政府公認の上、援助も受けているその機関。 犯罪を犯さない人間だけを生かす集団。 特別な能力を持った人間が、 能力を私利私欲のために使わないように、 監視の意味も含めて能力者を集めている。 その機関は一般には知らされず、 政府の中でも一部のものしかその存在を知らない。                      ただ平和という言葉だけを守るために。 この世界にはたくさんの決まりがある。 法律、規程、規則、マナ−、校則。 すべてのものが、人の自由を奪い、怪我し、駄目にしている。 そんなものの中にも聞こえはいいが上の五つとなんら変わりないものもある。 約束、運命。 私たちはこの世界に生まれながらにして、何かに縛られている。 そのしがらみは、大人になっても消える事なく、私たちに付きまとう。 何も抵抗せずに、ただその通りにしていた方がいいから としょうもない理由つけている。 自分の意思表示もせず、ただいるだけ。 まるで、人形のように。 子供が「どうして人を殺しちゃいけない。」のと 親に聞くとたいていの親が「つかまるからよ」という。 その答えは間違っている。 自分が刑務所に入りたければ、 どうぞこの世にいるむかつく人間すべてを殺してしまえばいい。 少年犯罪が増えて、世間を賑わしているが、 それだけ今の子は自分の気持ちに素直で 考えることの出来ないバカばっかりだと言うこと。 ただそれだけだ。 人の死、それは、生きることから逃げる唯一の方法。

ざぁぁぁぁ、 ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、 ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、 ざぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁ、 ざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、 ざぁぁぁぁぁぁあぁぁ。 最悪の朝だ。 昼まで寝ていたいのに、うるさい雨の音で眼が覚めた。 頭の上においた目覚まし時計にぼやけた眼を向ける。 ただいまAM 9:00。 体調は最悪。 気分は最悪。 昨日、徹夜で内職を無理やり終わらしたせいだ。 @ 俺の名前は

鏡崎 仁

年齢、16歳。小さい頃から眼が悪く、 一昨年ついに失明して左眼は義眼だ。 髪の色は金髪でピアスをしている。世間でいう不良だ。 しかも、十年前に気づいたことなのだが、俺には特別な能力があるらしい。 それは人に触れるだけで相手の死を見てしまう。 触れた人間の死ぬ瞬間が見えてしまう。 それだけならいいのだが、触れた人間はその後、急に気絶してしまうのだ。 それ以来、人には触れないようにしている。 その結果、引き籠り暦、約2年。 学校は中学校まで、まじめに行っていたが、 ある日、ついに学校の無駄さに気づき、不登校。 高校に上がる前についに辞めてしまった。 そして今となってはニート仲間入りをし、 気楽な内職尽くしの生活を送っている。 俺に親はいない。両方とも他界したと大家さんから聞いた。 小さい頃、ドアの前においてあった俺を このアパートの大家さんが拾ってくれて育ててくれたらしい。 今では、空き部屋に勝手に一人暮らしをしている状況だ。 @ ちなみ大家さんは、暇でやることがないからという理由で、 ただいま、モナコの方に三年間放浪中。 性格は優しくとても良い人なのだが、 自分が決めたことは何でも実行する性格で、 思いつきの旅もすぐに実行に移し、いつの間にかいなくなっていた。 その様な状況がかさなり、ただいま引き籠り中なのだ。 @ 眠たい右眼を擦りながら布団を蹴り飛ばす。 体を徐々に起こし、布団の上に座る。 まだ頭も体も寝ているせいか、何もしたくない。 でも、せっかく朝早く起きたので飯を食うことにした。 飯といっても食パン一枚。 おぼつかない足取りで台所に行き、 無造作に置かれた賞味期限切れのパンをトースターにいれ、 待つこと二分。 チーンと朝から元気よく音を響かせ、軽く焦げたパンが出てくる。 それに何も塗らないで、台所で立ったままかぶりつく。 あっという間に食べ終わり、ついでに顔を洗う。 顔を洗っても、頭は一考に起きない。 居間に戻ってきて、まだそのままにしていた布団に座り、 胡坐をかきながら、テレビに電源をつける。 何となくつけた番組、テレホンショッピングを眺める。 内職も終わらしてしまったのでやることも特にない。 昼までずっとテレビを眺めていた。

テレビを眺めて約三時間。 いろんな番組がやっていたが覚えているのは 最初のテレホンショッピングだけ。 他の番組は頭に残っていない。 昼になったので今度はちゃんと飯を食べることにした。 台所に行き、冷蔵庫を開けるが、 中に入っているのは、水とオレンジジュースだけ。 この二つで出来るメニューを探すが、 あたりまえのごとく出来るのは何もない。 出来るとすれば、オレンジジュースに水を混ぜた薄いオレンジジュースか ただのオレンジジュースだけ。 しかたなく、居間に戻り、押入れを開ける。 押入れの奥に隠しておいた、 今月貰った給料の茶封筒から二千円を抜き、 そのままポケットに入れ、部屋を出て行く。 近所のスーパーに行く。 外にでるとうるさく降っていた筈の雨は小降りになっていた。 傘もささず、スーパーに向かう。 スーパーに10分ぐらいで着いた。 店内は昼時と言う時間のためだろうか、おばさんで埋め尽くされている。 みんな似たような服を着て、似たような化粧をしている。 何一つ個性がない。 きもい、うざい、みんな死ね。 心でおばさんどもに向かい言う。 人ごみはもともと嫌いで、 できればこんなところには来たくないが、 此処まで来て引き返すのはもっと嫌い。というかだるい。 その中に体をぐんぐん入れて行き お目当てのところに来る。 安売りのカップ麺売り場で一番安いやつを手に取る。 それの量だけを確かめ四つを手に持ち、 惣菜売り場のおにぎりをこれも四つ持ちレジに並んだ。 売り場にはたくさんのおばさんがいたが、 レジは意外に空いていて、すぐに買うことが出来た。 今日買ったものは全部で720円だった。 安い。安すぎる。 声に出しては言わないが心の中で呟く。 帰り道、行きつけのタバコ屋による。 そこで、セブンスターのライトを二箱買った。 そこにいるおばあちゃんは決してボケてる訳ではないが 最初に行った時から俺にタバコを売ってくれる。 未成年であることはすでに知られている。 なのに、おばあちゃんは俺に優しく、 行っただけでいつも買うタバコが出てきて、 ついでにライターまでただでくれる。 帰りぎわには「また来てや。」 なんていつも通りに俺を見送ってくれる。 そのせいか、いつもタバコを買うなら此処と決めている。 家に帰り、まずタバコに火をつける。 そして、台所でヤカンに水道で水をいれ、火にかける。 タバコを吸っている間にお湯が沸き、 カップラーメンにお湯を入れる。 台所からおにぎりを1個持って居間に移動し、 二分たったところでタバコの火を消し、 ふたを開け、おにぎり片手にラーメンを食べる。 それを三十分ぐらいで食べ終わり、またタバコを吸う。 吸いながら、テレビに電源をつけ、また眺める。 タバコを吸い終わると食った残骸を一つのゴミ箱に入れ、 テレビをまた見る。 時計にふっと眼をやると時間はすでにもう三時を指していた。

テレビを見ていると、 「ピーン、ポーン」 とドアの向こうに呼び鈴が付いてるのにもかかわらず、 自分の口でいうバカなやつが来た。 玄関まで行き、ドアを開ける。 其処には、中学の知り合いの山下 友成と クリストファー・ヘルがいた。 開けて二人の顔を見るなりドアを閉じる。 「待て、開けろよ。」 友成がドアごしに突っ込んでくる。 「何で来るんだよ、お前らわ。家の方向逆だろうが。」 「せっかく来てやった大親友たちを追い返すのか。お前は。」 「すまん。帰れ。」 「いいから開けろ。」 しかたなくドアを開ける。 友成は俺がドアを開け、顔合わすと 「ちぃわーす」 なんてわけの分からない掛け声をかける。 こっちもめんどくさいが小さい声で 「ちぃわーす」 と言う。 友成は気に入らないのか、クリスも巻き込んで 「もう一度。ちぃわーす。」 と大声で言う。 「いいから入れよ。疲れるからさ。」 「しかたないな。今日はこの辺にしとくわ。入ろうぜ、クリス。」 今までの会話で一切入ってこなかったクリスは 「久しぶり。」 なんて昨日会ったばっかなのに、そんな挨拶をしてくる。 @

山下 友成

             こいつとは、小学校からの付き合いの仲だ。 髪は短髪で黒。かなりのイケメンで、女の子が大好きなやつ。 今まで会った女の子で例外{○ス}を除いてすべての女の子に声を掛けている。 でも、俺の知ってる人間の中で一番、情を大切にする人間だ。 こいつとは幼馴染でもあるのだが一緒に遊ぶようになったのは小学校からだ。

クリストファー・ヘル

          こいつとは、中学校からの付き合いだ。 中学校の一年の時に転校して来たやつ。 髪は金髪で長髪。サッカー部に所属しており、体格はかなりいい。 長身でモデルみたいな体系だ。 クリスは、人の意見を聞くのが嫌いで頑固者だ。 クリスという略称は俺と友成で名前が長いということで考えた。 もちろん彼は帰国子男で、家は金持ちと来た。 金に糸目をつけない良いやつ。 @ 俺の行っていた学校は、都立黒部中高一貫学校。 この一貫学校は、中学部に入っただけで、 高校への道が約束された学校。 だからと言っても、入学は簡単で、 ある程度のお金さえ積めば入れてくれる学校。 どんな問題児でも。 俺にはそんなお金なかったが、 大家さんがアパートから近いし、 勉強しなくても良いから行けと強く押されたので入学した。 学校の校則もゆるく、生徒の自由を尊重しすぎた学校だ。 担任は6年間変わらず、一貫してずっと同じ担任だ。 学校は中学と高校に分かれたおり 一貫学校だが別々な感じになっている。 これが俺の行っていた学校。 @ 居間に二人を招き、座る。 「二人して大量の荷物持ってんな。」 と二人をじろじろ見ながら聞く。 「何言ってんだよ。お前のために食量を買ってきてやったんだろう。」 ほれっとクリスと友成はビニール袋を机の上に置く。 「ただでくれんのか。」 「おごってやるよ。金はクリスが出したけどな。」 「クリス様ありがとうございます。 これからも良いお付き合いをしていきたいと思います。」 「別にいいよ。金ならいくらでもあるし。」 「っていうか俺にもありがとうございましたの一言はないのかよ」 「ない。」 「何だとー。」 と友成は俺に掴みかかってくる。 俺は軽くあしらう。クリスはそれを見て軽く笑っている。 俺たちの仲は、いつもこんな感じ。 そして、クリスがおごってくれたお菓子やジュースを飲み、 学校での話しや友成のナンパ話、クリスの部活のことなどを聞く。 三人で話していると終わりがない。 友成がどんどん話題をふってくれるので、 話しが終わることはない。 そのためいつも話を終わるタイミングは クリスからのアイコンタクト。 俺は三人でいるとき、 クリスからのアイコンタクトを見逃したことがない。 今日もクリスからのアイコンタクトを見逃さなかった。 「そこでさ、俺が・・・・・・・」 「今日は此処まで。時間も遅いし、お前ら帰れ。」 無理やり友成が話してるところに入り込む。 そこにクリスが援護する。 「そうするとしよう。さぁ立て、友成。」 「もうそんな時間かよ。しかたない帰るか。」 友成は最初の頃は、話をさいぎろうが、 蹴りを入れようが、話を止めなかったが、 最近は物分りがよくなったのか、 あっさりと話をやめ、帰るようになった。 「またな、仁。」 「おう。」 最初にクリスが部屋から出て行く。 その後に続き、友成が出て行く。 「今度までには、ちゃんと例の挨拶できるようにしとけよ。」 「ノーコメントで。」 友成は、はぁはぁはぁはぁはと笑いながら、 友成とクリスは俺の家を後にした。 あいつらが帰った後はいつものことだがかなり汚い。 お菓子の食った後の袋はあちこちに散らかっているわ、 机の上はお菓子のクズとジュースの水滴で汚れているわ。 まぁこの代償として 楽しい時間をすごせたと思えば少しは気がらくだ。 さっさとかたずけ、 あいつらが来る前の部屋の状態に戻す。 かたずけが終わり時計を見るとすでに十時を指していた。 俺はタバコを吸って一服し、風呂に入りに行く。 風呂は自分の部屋には付いていないので、 大家さんの部屋に行く。 このアパートで唯一風呂が付いていないのが俺の部屋。 だからかもしれないが、誰もこの部屋を借りようとしない。 俺は大家さんの部屋に行き、鍵を開け風呂に入る。 もともと俺は大家さんの部屋で暮らしていたので、 合鍵ぐらいは持っている。 風呂から出て自分の部屋に戻り、 布団にねっころがり、そのまま就寝。 電気も消さず、そのまま深い眠りに付く。