外はすでに日が落ち、暗くなっていた。 俺はその中、 昼からずっとこつこつ内職に励んでいた。 昼からしていたためかダンボールの三分の一はすでに終わった。 集中力も切れ、 だんだんだるくなってきたのでそこで止めた。 瞼はかなり重く、動かしていなかった体は、 伸びをするだけであちこちから、 パキ、パキと悲鳴を上げる。 かなり疲れていたので風呂に入ることにした。 それは、風呂に入れば、疲れもとれるだろうという勝手な予想のため。 内職の道具をかたずけ、 タオルと着替えを持ち、家を出る。 昨日から風呂に入っていないせいだろう、 体のどこからともなく血の臭いがする。 Tシャツを着替えただけじゃ、 臭いまでは取れなかったらしい。 大家さんの部屋に向かい、 鍵を開け、中に入り風呂の準備をする。 お湯は十分ぐらいでたまった。 服を脱いで傷を見る。 刺れたのは十センチぐらい。 でもそこは、綺麗に縫い合わされていた。 誰がやったのかは、分からないが、 かなり腕の良い医者がやったと、 素人からでも分かるくらい綺麗に縫い合わされていた。 傷に沿って指を動かす。 昨日の記憶が蘇る。 桐谷君という少年。 俺に包丁を刺し笑った顔が鮮明に思い出される。 そんな記憶を頭を振り、無理やり消し、 勢いよく風呂に飛び込む。 体と頭を石鹸で綺麗に洗い、 軽くお湯に浸かって、出た。 出た後、入念に体の水分を拭き取り、 着替え、部屋を出る。 部屋に戻る途中、腕を回したりしてみるが、 自分の体から疲れがとれていなかった。 部屋に戻り、時計に眼をやると、 午後7:30になっていた。 飯を食べようと思い、台所に行く。 でも、ここにあるのは、いつものメニュー。 今日はなんだか久しぶりに贅沢をしたい気分になった。 押入れから、給料の入った袋を出す。 そこから、また二千円抜き、 そのままポケットに入れ、家を出て行く。 いつもなら帰りによるタバコ屋に先による。 なぜなら、このタバコ屋は八時には閉まってしまうからだ。 タバコ屋に入り、いつものヤツを今日は三箱買う。 買ったやつをポケットに詰め込む。 おばあちゃんは、ライターをくれようとしているのか、 あっちこっちを探している。 おばあちゃんは、ライターを一つ手に持ち、 申し訳なさそうにそのライターを渡した。 「ごめんよ。今日は小さいライターしかないんだけどいいかい。」 渡し際、そんなことを聞いてくる。 「何でもいいよ。ありがと。」 俺はおばあちゃんに笑顔を向け、 そしてそのライター貰い、今度はスーパーに向かった。 スーパーに入る。 スーパーは昼のにぎやかさを失い、 静まりかえっていた。 スーパーにいるのは、 独身男性と思われるスーツを着た男性や これからラブホにでも行きそうな勢いのカップルと 深夜バイトの店員だけ。 俺は惣菜の売り場に行った。 残っているのは、極わずか。 選べるジャンルは一つしかなく、 選べる種類も三種類しかなかった。 焼き飯か、酢豚か、から揚げ。 もちろんジャンルは中華。 俺は仕方なくその中から、 焼き飯を選び、レジで買った。 スーパーなのに、たかが焼き飯なのに、 520円もしやがった。 これも自分の欲に負けたせいだと諦め、 スーパーを後にする。 帰り道、いつもは何気なく無視して通る、 交差点で足を止める。 信号の色は赤。 道路は赤に染められていた。 足を止めたのは、ただ単に信号を守ったわけではない。 その向こう側にクリスっぽい人影を見たから。 クリスは俺らとつるんでいる時意外、 無闇に夜中を歩き回るようなヤツではない。 それは、三年間つるんできた俺が言うんだから、 間違いはない。 そのとき拓海の言葉が心の底から聞こえた。 「自分の中の勝手なルールを作るな。」 俺の頭の中をその言葉がグルグル何回も回る。 これは俺の勝手なル−ル何かじゃない。 これは、きっと友情から生まれた信頼。 俺は自分に自分でいいわけし、 その場を無視して、青になった信号を見ながら、 角を曲がり、アパートに帰った。 アパートに戻り、自分の部屋に着いても、 あの人影のことが気になっていた。 俺は台所に焼き飯をビニール袋に入ったままおいて、 ポケットに詰め込んだタバコを出し、火をつけ、 居間でそのことをずっと考えていた。 アレは本当にクリスだったのか。 クリスに似た別人だったのか。 なぜ俺は人影を見ただけでクリスと感じたのか。 なぜ間違っても良いから声をかけなかったのか。 そんな自問を頭の中で永遠に繰り返えされていた。 時計は考えてる間にも、チク、チク、と確実に時を刻んでいく。 俺はその晩の内に答えを出そうと必死に、 ない頭で考えていた。 答えを出すのに、 そう時間はかからなかった。 答えは簡単。 アレは本当にクリスだったのか。
クリスではなかった。
クリスに似た別人だったのか。きっとそうだ。
なぜ俺は人影を見ただけでクリスと感じたのか。背、格好が似ていたから。
なぜ間違っても良いから声をかけなかったのか。何となくだろう。
俺の中の勝手な(ルール)いいわけを作り、 俺はとりあえず、寝ることにした。 押入れから布団を引きづり降ろし、 綺麗にひく。 考えるのが嫌になったからそんな答えを出したんじゃない。 答えが一考に出てこないから。 自分がそうあってほしい願っていたから。 明日、クリスに会えばこの答えはものの数秒で出る。 きっと俺の希望(願い)どおりの答えが、 クリスの口から出てくるはずだ。 今日は明日のために寝ることにした。眼が自然と開く。 物音一つない静かな朝。 いつもは車が走る騒音や 隣人の出勤していく音がするはずなのに、 今日はしない。 時計を見る。 ただいま朝の8:00。 携帯を見て、今日が日曜日であることに気づいた。 どおりで音がしないわけである。 朝の目覚めはそう悪くわなかった。 むしろいつもより良いほうなのかもしれない。 体を動かそうとしたとたん昨日の問いが、 また頭の中で回る。 今日は頭の回転が良いらしい。 思い出したくもないことが勝手に頭に浮かぶんだから。 頭の思考を無視し、体を起こし、 布団から出る。 起きたばっかりで、お腹は空いていないが、 朝起きた時の習慣だろうか、 自然と体は、台所に向かって歩きだしていた。 台所には何かが入ったビニール袋が、 無造作に置かれていた。 恐る恐る中を見るとそこに入っていたのは、 やはり・・・・・・・・・昨日の焼き飯だった。 フル回転している今の頭でも、 昨日スーパーに焼き飯を買いに行ってから、 焼き飯を家で食べた記憶はない。 頭を抱え込み、 仕方なく冷蔵庫にしまう事にした。 焼き飯のことは忘れ、 習慣に逆らうことなく飯を食べることにした。 賞味期限切れの食パン。いつものメニュー。 今日は皿とコップも出す。 コップに冷蔵庫に入ったオレンジジュースを注ぐ。 パンはトースターに入れ、焦げないように、 トースターを真剣に見ながら、焼いた。 焼き上がり、台所で地べたに座り込み、 オレンジジュースを飲みながら、パンをかじる。 見て焼いたおかげで焦げていないパンを 久しぶり食べることが出来た。 それを食べ終わり、コップと皿を流しに置き、 そのまま居間に戻る。 居間に戻った後、すぐに布団をかたずけ、 机に内職の機械と部品を置き内職をする準備だけをした。 床に座り、タバコに火をつけ一服する。 天上を見ながら、ほのぼの吸う。 タバコを吸い終わり、 昨日やり残した内職を始める。 地道にコツコツやっていると 呼び鈴がなった。 ピンポーン 呼び鈴を鳴らすあたり、 友成とクリスでないことはわかった。 「はーい。」 と返事だけして、内職を続けた。 正直、俺の家に来て、 呼び鈴を鳴らす相手は、決まっている。 翔太さんか何かの勧誘の人だけだ。 たぶん、返事だけして出て行かないのに 怒鳴り声が聞こえないということはたぶん後者の方に違いない。 俺はそのまま作業を続けた。 ドアの向こうからは、 「すいません。あのちょっと出てきてもらえませんかね。」 なんて声が聞こえる。 俺はその声を無視して作業に没頭する。 ドアの向こうでは必死にねばっている。 「すいません。資料だけでも見ていただけないでしょうか。」 こんなことを何回も言ってくるもんだから、 俺はむかつき、きれてしまった。 「とっと帰れ。誰の承諾得て、人家の前にいやがる。 帰らないと殺すぞ。」 と家の中から言い放ち、作業を続ける。 すろと少し間をおき外から、 「出てこいや。資料だけでも見ろ言うてんねん。 オマエ調子のんなよ。」 と俺以上に怒鳴る声が聞こえ、 その声はさっきの弱弱しい声とは違いかなり攻撃的な声だ。 俺は作業をすぐさま止め、 ダッシュで玄関に走っていく。 すぐにドアを開けた。 そこには、ヤンキーやってましたといわんばかりの 眼つきをした男が立ていた。 その人は俺を見るなり、資料を無理やり渡し、 俺のことを睨みながら一言も喋らず帰っていた。 俺はドアをゆっくりと閉める。 俺の心臓が打つ早さは通常の二倍の速さになっていた。 正直、かなりビビっていた。 居間の床に座る。 俺は今、放心状態。 少ししてから、何にも考えず内職を始めるが、 さっきのこともあり、なかなか集中出来ない。 内職を止め、床に寝転ぶ。 時計に眼をやるといつの間にか12:00になっていた。
いつの間にか昼になっていたので、 内職をやめ、昼食を食べることにした。 食べるのはもちろん、 冷蔵庫にしまった焼き飯。 台所に行き、冷蔵庫を開け、 焼き飯を取り出す。 電子レンジで二分ほど暖める。 暖め終わるまで、 電子レンジの横で立ちながら待つ。 ピィ、ピィ。 と電子レンジが鳴り、取り出すと、 容器が軽く変形するぐらい暖まっていた。 電子レンジからだし、容器の端っこを持ち、 慌てて居間の机の上に置く。 かなり熱い。 暖めすぎたと後悔しながら、 焼き飯の入っていた袋から、 割り箸を出し、息を吹きかけながら食べる。 吹いて口に入れても、 熱かった。そのぐらい温まっていた。 熱い焼き飯を食べていると、 ドアの向こうから、 「ピーンポーン」 とやっぱり口で言うやつが来た。 返事もせずに玄関に向かう。 玄関に行き、ドアを開けると、 そこには見たこともない風景が広がっていた。 友成とクリスがいるのはわかるが、 そこには誰かも分からない三人の女の子が立っていた。 とりあえず挨拶をした。 「どうも、こんにちわ。 ところでどいう状況なのか誰か説明してくれない。」 そんな混乱している俺を無視して、 「説明なんて後、後。とりあずみんな入ってよ。 狭い家だけど落ち着くからさ。」 友成は女の子を家に入れる。 女の子はそれぞれ三者三様の挨拶していく。 「お邪魔しまーす。」 「うわ。せまっ。」 「すいません。勝手に来てしまって。」 その後に、 「ちわーす。」 「すまん。」 と友成とクリスが入ろうとするが、 それを止め、二人を外に出す。 俺も外に出で、二人を睨む。 するとクリスが重い口を開けた。 「実は今日、友成と遊んでいて、やることがないから仁の家に行くことになって、 仁の家の行こうとしている途中に、彼女たちと会ってしまった。 後のことは言わなくても理解してくれ。すまん。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つっこみどころ満載だがつまり・・・・・・・。」 つまりこういうことだ。 俺の家に行こうとしてたら彼女たちに会い、 友成が何気なく女の子たちをナンパして、 彼女たちが良い返事をしちゃったばっかりに、 俺の家に一緒に来てしまったということだろう。 「友成、オマエどうなるか分かってんだろうな。」 「いいじゃん。いつも野朗だけじゃつまんないだろ。」 「そうだけど、・・・・・・・・・・・」 「じゃ、良いじゃん。償いは必ずするからさ。」 「これは、俺からの償いだ。許してくれ。」 クリスは両手に持ったビニール袋を 俺に差し出す。 「クリスはいいよ。いつも世話になってるし、 問題はこの問題児のほうだよ。」 「いいじゃん、いいじゃん。」 といいながら友成は、 勝手にドアを開け入っていく。 クリスと俺は互いに眼を合わせてから、 一緒にため息をつく。 ドアを開け、二人で中に入る。 居間に行くと、友成と女の子三人は、 机の周りに座り、楽しそうにくつろぎながら、 しゃべっている。 俺とクリスはその輪に入れず、 友成の後ろのほうに座りながら焼き飯を食べる。 すると友成が 「このかたがさっき話した鏡崎仁くんでーす。」 と俺を指差し、俺の変わりに自己紹介してくれた。 俺は友成を脚で蹴っ飛ばし、食べている手を止め、女の子たちに聞く。 「君たちは誰。」 すると友成は、女の子がしゃべるより早く、 しゃべりだす。 「左から、七倉光ちゃん、桑本愛ちゃん、南浦エリカちゃんでーす。 みんな、かわい子ちゃんたちばっかりでーす。」 なんてうざいぐらいのテンションの高さの 自己紹介を友成がしてくれた。 @ 七倉 光 年齢、十六歳。俺らと同じ学校の隣のクラス。 赤茶の髪でショート。眼の色は灰色。赤色のネックレスをしている。 クラスでは有名な優等生で、 部活をしていて、バスケ部に所属しているらしい。 この三人の中では一番おとなしく、年相応の格好をしている。 二人とは、中学校からの付き合いで、 優等生なので友達も少なく、この三人ぐらいしかいないらしい。 俺の家に来たのも、桑本や南浦が行こう、 と言うもんだからそれについて来ただけらしい。 @ 桑本 愛 年齢、十六歳。七倉 光と同じクラス。 長髪の茶髪。眼の色は茶色。紫色のアンクレットをしている。 めちゃくちゃ明るい性格でクラスのムードメイカーで、 部活をしていて七倉と同じでバスケ部に所属しているらしい。 この三人の中で一番明るく、派手な格好をしている。 南浦 エリカとは幼馴染でかなり仲が良いらしい。 俺の家に来たのは、友成がカッコよく、面白そうだから来たらしい。 @ 南浦 エリカ 年齢、十六歳。二人と同じクラスメイト。 金髪と銀髪と茶髪が混じった髪で巻き髪。 ギャル系でクラスでは浮く存在。 しかし、男子の一部に人気があり、常に男とつるんでる。 この三人の中で一番派手な格好をしている。 今、流行りなのか、見せブラと見せパンが、 普通にしていても見えるような格好をしている 俺の家に来たのは、暇だし、クリスがカッコよかったから来たらしい。 @ 互いに自己紹介が終わった後、クリスが持ってきてくれた、 お菓子やジュースを飲みながら、くだらない話をしていた。 俺が学校に行ってない話、 (無駄だから。) 友成のナンパの話、 (成功したのが今日初めて。) クリスの小学校時代の話、 (有名な所に通っていたこと。) 七倉の優等生ぶりや、 (実は学校にいるときだけ。) 桑本の元気のよさについてや、 (いつも朝からオロナミンCを飲むこと。) 南浦の格好について。 (本人いわく普通。) みんな、それぞれ自分のことを語り、 たのしい時間をすごしていた。 今日はまだクリスからの合図もない。 クリスも意外に楽しんでいるようだ。 すると桑本が腕時計を見て、 「もうこんな時間。私、帰るわ。 親がうるさいし。」 「まだ、いいじゃん。もうちょい居ようよ。」 と友成が止めに入ろうとしている時、 不意にクリスからの合図が来た。 俺は友成の腕を持ち、立たせ、 「今日はここまで。また休みにでも、 集まって遊べば良いじゃん。」 と言ってみんなも帰るように促す。 すると、いつものごとくクリスの援護射撃が来た。 「友成。帰ろう。今日はオマエが悪いんだから。」 友成は、舌打ちをしてから全員に、 「じゃ、今度の日曜はみんな空けといてくれよ。」 と言い、桑本としゃべりながら先に出て行く。 クリスはその後に続いて出て行く。 南浦はクリスの後を追って出て行く。 一人マイペースに七倉が出て行く。 俺もみんなを送りに外に出ると、 みんな俺が出てくるのを待っていたかのようにドアの前にいた。 そこで、友成が 「仁、おまえ光ちゃん送っててやれよ。 俺とクリスで、愛ちゃんとエリカちゃん送っていくからさ。」 「わかった。じゃ、今度の日曜日にな。」 「必ず開けとけよ。」 「またな仁。」 俺はクリスと友成に別れを告げる。 「光、学校でね。」 「鏡崎くんになんかされたら電話してね。」 「わかった。また明日ね。」 七倉も桑本と南浦に別れを告げる。 二人で四人の背中を見送る。 四人の背中が小さくなるまで見送った。 あの時間は俺にとっても楽し時間だったのかもしれない。 少し間をおき、七倉の方を見て、 「帰るか。」 「うん。」 そう言ったとたん、桑本の言葉が頭をよぎる。 「俺、なんかしそうに見える。」 「ちょっと。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」 ショックを受けながら、 七倉を送ることにした。 二人で友成たちとは逆方向に歩き出す。 帰る途中、気を使って何かしゃべろうとするが、 友成のように次から次に話題が浮かんでこない。 そんな風に悩んでいると、 七倉が俺の様子を見たのか話しかけてきた。 「鏡崎くんて、もう学校に来ないの。」 なんて俺にはうざい話題をふってくる。 正直、俺は今の生活を崩そうとも思わないし、 教師のくだらん授業にも付き合う気はさらさらない。 「行かないよ。一生。」 「そうなんだ。」 七倉は寂しそうな顔してくれている。 俺はその顔の意味が分かったので、不思議そうに聞いたみた。 「なんで。」 「みんなで学校で遊んだり、勉強したいなって思って。」 「優等生だな。典型的な。」 「ごめんなさいね、優等生で。」 なんて冗談交じりに話しながら、 七倉の家に着いた。 「ありがとう。送ってくれて。」 「いいよ。別にやることもないし。」 「じゃ、日曜日に。」 「あぁ、また。」 七倉とも別れを告げ、家に帰る。 一人で来た道を戻り、クリスに昨日のことを聞くのを忘れた事に気がついた。 でも、もう遅い事も解かっていたので考えない事にした。 何事もなくアパートに着く。 家のドアを開けようとした時、携帯がなった。 殺せ。殺せ。殺せ。