○○○○○ 鏡崎くん、・・・・・鏡崎くん、・・・・・・・。 頭の中で声がする。 鏡崎くん、・・・・・鏡崎くん、・・・・・・・。 誰だよ。 鏡崎くん、・・・・・鏡崎くん、・・・・・・・。 何回も呼ばなくても聞こえてる。 鏡崎くん、・・・・・鏡崎くん、・・・・・・・。 うるさい。 すると思いっきり、頬を叩かれた。 眼が覚める。 目の前には七倉がいた。 「大丈夫。痛かった。」 人を叩いておきながら、 心配そうな目で見てくる。 「大丈夫。今の一発で眼が覚めたよ。」 体を起こそうとするが、体があまりに重く、 起き上がることすら出来ない。 「無理しないで。今、手当てするから。」 七倉は靴を脱ぎ、部屋に入っていき、 前に買ってきてくれていた治療セットを持ってきた。 「また手首怪我してる。 もしかして鏡崎くんってリストカットが好きな人なの。」 「実はそうだったりするかも。」 笑いながら答える。 「じゃ仕方ないわね。 今度はリストカットできないように鉛でも仕込んどこうかな。」 「ありがとう。」 俺は素直に七倉に礼を言う。 七倉も何も言わないまま包帯を巻いてくれた。 七倉は俺を立たそうとして体に触れる。 「濡れてる。もしかして、あの雨の中、 傘も差さずにどっか行ってたの。」 「まぁね。」 「重症だね。鏡崎くんはリストカットが好きな上に 雨も好きなんだね。」 「そうかも。」 「どうしよう。服着替えないといけないけど。」 「じゃ服を適当に持ってきてくれないか。自分で着替えるからさ。」 「わかった。適当に持ってくるよ。」 七倉が持ってきてくれた服は、 本当に適当で突っ込みどころが満載だった。 しかし、何も言わずに着替えることにした。 七倉には部屋を出ってもらい、 玄関で動かない体を無理やり動かす。 まず体を起こす。 腹筋を使い無理やり体を起こした。 すると頭に頭痛が走る。 風邪のせいか血が出すぎたせいか、 とにかく重症には違いなかった。 とりあえず力の出ない手で何とか靴を脱ぎ、 上の服を脱ぐ。 問題はズボン。 必ず一瞬でも体を浮かさなければならない。 まず、ズボンを下げられるギリギリまで下げる。 そして、ズボンに手をかけ、床に手を付く。 足の力を使い、 体だけを後ろにやり、ようやく脱ぐことが出来た。 穿く時は、その手順を逆にやった。 そうして何とか着替えることが出来た。 ドアの向こうで待っていてくれているだろう 七倉を呼ぶ。 「七倉、着替え終えたから、入ってきて肩貸してくれないか。」 「わかった。開けるよ。」 七倉は恐る恐るドアを開け、 俺を見ると肩を貸してくれた。 居間に行き、その場に座らしてもらう。 「悪いな。面倒かけて。」 「いいよ。もう慣れたから。」 俺はその場に座り、机の上を見る。 タバコを探すが切らしていたことにすぐ気づいた。 「もしかして、タバコないの。」 「あぁ、昨日ちょうど切れてさ。」 「買ってきてあげるよ。お昼買いに行くついでに。」 「いいのか。」 「いいよ。何のタバコ。」 「セブンスターのライトで頼む。 金は押入れに入っているから、1カートン頼むよ。」 「わかった。」 七倉は押入れを開け、封筒からお金を出し、 自分の財布に詰め込み、買いに行ってくれた。 俺は七倉が出て行った後、 包帯で足首のところを巻いた。 熱があるせいか、 ボーっと座っているだけなのにしんどい。 本当は布団に寝たい気分だが、 布団を出す力すらない。 俺はその場に寝ころがり、 また眠りに付いた。 ○○○○○鏡崎くんの家を出て、スーパーに向かう。 スーパーは、いっぱいだった。 近所の人でごったがえしていた。 家族ずれもいれば、カップルもいる。 たぶん今日が、祝日だからだろう。 スーパーで鏡崎くんの分と 自分の分の食事を買い、スーパーを出る。 今日は二人の分を買ったので1500円。 まぁこんなもんかと思いながら家路を急ぐ。 帰りにエリカの家で、頼まれたカートンを買い、 アパートに戻る。 アパートに帰る途中で拓海さんに会った。 「こんにちは。」 「久しぶりだね。仕事の方、頑張ってる。」 それを聞かれると正直困る。 まだ一人も殺していない、なんて言えない。 「今日も行こうと思ってます。」 「じゃ、頑張ってね。」 拓海さんは手を振りながら、 タバコ屋の方に消えていった。 私はアパートに戻ることにした。 ノックもしないで、鏡崎の部屋に入る。 「買ってきたよ。」 居間に行くと、気持ちよさそうな顔で スヤスヤ眠る鏡崎くんがいた。 静かにタバコとお昼ご飯を置き、 部屋から出て行く。 自分の部屋に戻り、自分のご飯を作り、 一人で食べる。 「ほんとは一緒に食べたかったな。」 と一人でぼやきつつ、スパゲティーを食べる。 昼ごはんを食べ終わり、かたずけをして、 暖かいお茶をすすりながら、一服する。 一服し終わった後、 学校の宿題と予習をする。 宿題はすぐに終わったが、 予習は全教科するのでかなりの時間がかかった。 時計を見ると、 もう五時になっていた。 昨日といいその前といい、 リストに載っている人間を誰も殺せていない。 さすがにやばいと思った。 でも、鏡崎くんはあんな状態だし、 いちよう声だけかけて、一人で行こうと思い準備を始める。 ローブを着て、 金剛棒を背中に背負う。 家に鍵をして、 隣の部屋の鏡崎くんの部屋の呼び鈴を鳴らす。 すると中から、 「はーい。」 なんていう元気な声が聞こえてきた。 元気な声を聞いてほっとした。 ドアが開く。 そこには元気な顔色をした鏡崎くんがいた。
○○○○○ 熱さで眼が覚めた。 体を起こし、 額に手を当てるとすごい量の汗が手につく。 長袖のシャツを脱いで、見ると、 背中にも前にも汗をかいた後がはっきり分かるぐらいに濡れていた。 風呂にでも入って、 汗を流そうと思い立ち上がる。 すると足に檄痛が走り顔がいがむ。 つい壁に手をかけてしまった。 激痛が走るが立てないほどの痛みではなかった。 完全に忘れていたことを思いだした。 手首と足首を怪我していることを。 でも痛みがあるだけで、 動けないわけではない。 風呂の準備をして、風呂に入る。 風呂に入ると言ってもシャワーを浴びるだけ。 それでも、足首と手首がしみる。 何とか耐え、風呂から出る。 部屋に戻り、机の上に置いてあった、タバコを吸う。 ようやく気分が落ち着いた。 タバコの横に置いてある飯を作ることにした。 さっきまではそんなことに気づく余裕がなかった。 お湯を沸かし、麺を湯がいて、 だしを入れ待つこと三分。完成。 居間に行き、テレビを見ながら食べていると、 呼び鈴が鳴った。 「はーい。」 返事をしてドアを開けに行く。 ゆっくりドアを開けるとそこには七倉がいた。 「どうした。」 「大丈夫なの。」 「ちょっと痛むけど、歩けないほどじゃない。 それと飯とタバコありがとうな。」 「別に良いよ。私、今から仕事に行こうと思ってるんだけど、どうする。」 「行くだけ行くよ。さすがに人を殺せるほどの余裕はないけど、 俺もいちようSAPの一員だしいないよりいたほうがましだろう。」 「うん。じゃ七時に行くから準備しといて。」 「わかった、準備できたらこっちから誘いに行くよ。」 「うん。じゃ待ってるね。」 ドアを閉め、七倉は根っからの優等生だなと思いつつ居間に戻り、 飯を急いで食べ、ローブを着てベルトをする。 そして七倉の家に誘いに行く。 「早いね。まだ三十分はあったのに。」 「待たすのも悪いしな。行こうぜ。」 七倉は頷き、そのまま一緒に行く。 今日も七倉が先を歩き、俺はその後を歩く。 会話がない。何をしゃべって良いか分からない。 俺が話題を探していると七倉がしゃべりかけてきた。 「鏡崎くんが腰につけてるナイフとダガー、 六刀っていうんだよ。」 しゃべりかけてきたなと思ったら、 いきなりそんな話題を振ってくる。 「なんでそんなこと知ってんだよ。」 「拓海さんから聞いた。」 「拓海と会ったのか。」 久しぶりに聞く名前だ。最近は俺の前に現れない。 別にいいんだけど。 「うん。タバコ屋で会った。」 「何か言ってた。」 「頑張れって言ってた。 」 「それだけかよ。 」 いない拓海に突っ込みをいれる。 何か労いの言葉とかないのかよ。と、 さらに心の中で突っ込みを入れる。 「それで今日はどこに向かってるんだ。」 「嘉島ビル。 」 「嘉島ビルって一番高いビルのことか。」 嘉島ビル。 この町の市長が立てたことで有名で、 この町では一番高いビル。 「そう。その屋上に今日のターゲットがいるはず。」 「名前は何て言うんだ。」 「不明。」 「年はいくつ。」 「同じ年。」 「罪名は何。」 「無差別殺人。」 俺の質問に淡々と答える。 たぶん今日の七倉はやる気満々なんだろう。 気合が入ってるのが、 背中からでも分かる。 俺は黙って、七倉の後を付いて行く。 ビルに着いた。 七倉は止まることもしないで 無断で扉を開け入って行く。 警備員や警報がならなくて、 ほっと一人胸をなでおろした 時間帯が遅いので、人はいない。 エレベーターも止まっているだろうと想い、 階段で上がる事を覚悟した。 しかし、その覚悟は無駄だった。 幸いエレベーターは動いていた。 エレベーターに乗り屋上に向かう。 屋上に行き、ドアを開けると、 そこには背中にライフルを背負う 黒部一貫高校の服を着た女子生徒がいた。 俺たちが来たことにも気づかず ビルの上から町を見下ろす。 すると、背中に背負うライフルを構える。 俺が走ろうとした時、七倉はもう前を走っていた。 七倉も背中に背負っていた棒を構え、 飛びながら、相手に向かい投げつける。 相手はようやく気づき、紙一重で棒を避ける。 棒はコンクリートのビルに突き刺さった。 初めて見る、 自分以外の戦闘を俺はこの右目に焼き付けていた。 七倉は着地し、棒を抜き取り、 相手に構える。 しかし、七倉は構えるのをすぐに止めた。 「何で飯島先輩が。」 「七倉じゃないか。 楽しいな。やっぱ人を殺すのわ。」 「なんでなんですか。」 「だから、人を殺すのが楽しいって言ってるじゃない。」 「なんで。」 「うるさいわよ。何回も何回も同じことを。 もういい、殺す。うるさいヤツは殺す。」 @ 飯島 宮子 長髪の茶髪。バスケ部の部長。 部活が命の活発な人。 頭は悪く、天然。 いつもジャージ姿。 @ 飯島はライフルを構え、七倉に発砲した。 七倉は動きもせず、ただ立ち尽くしている。 俺はライフルが撃たれる前から、 七倉に向かって走っていた。 七倉の体を掴み、体を低くさせた。 それで何とか弾は避けれた。 「オマエ何やってんだ。避けなきゃ死ぬんだぞ。」 「ごめん。もう大丈夫。退いて鏡崎くん。」 七倉は立ち上がり、棒を構え、 飯島に向かい走っていった。 七倉の眼はいつもの優しい眼じゃなかった。 それは相手を睨みつける鋭い眼。 相手は近距離にむかない獲物を持っているためか、 後ろに下がりつつ、ライフルを撃ち続ける。 七倉はその飛んでくる銃弾を一つ一つ棒で叩き落す。 しかも走ったり飛んだりしながら。 正直その戦っている姿は、 踊っているみたいに綺麗だった。 七倉は徐々に距離を詰めていく。 飯島はライフルを撃ちすぎたせいか弾が切れる。 ライフルは通常、一発で相手を仕留める獲物。 弾の詰められる量は少ない。 七倉は棒を右手で持ち、飯島の腹めがけ放つ。 それは飯島に弾かれもせず、見事に腹に当たり、飯島を飛ばす。 飯島は飛び、ライフルを落とし、 倒れこむ。 その間に七倉は詰め寄って行く。 飯島は起き上がろうとし、 顔を上げた瞬間に七倉は手で触れた。 七倉の能力がどんな能力かは知らないが、 飯島はケラケラ笑い出した。 七倉は飯島に背を向け、 ゆっくりと俺の元に返ってくる。 飯島はその間もケラケラ笑い、 暴れている。 七倉は俺に正面からぶつかった。 頭を下げ、顔を見せようとしない。 その体は少し震えていた。 ・・・・・・・・わかった。 ・・・・・・・・泣いているんだと。 「泣けよ。誰も見てないんだ。 思いっきり泣け。」 七倉は俺の胸で震えながら泣き出す。 やっぱり七倉は優等生(いい子)なんだと再確認した。 自分で友達をやってしまった辛さ、 自分の決心、理想の重さ、 そんな思いが一気に押し押せてきたんだろう。 気持ちが痛いくらいに分かった。 だから胸を貸した。 俺は七倉から眼を逸らし、 そこから見える悲しい風景を見ていた。 すると、 パチパチパチ。 屋上の入口から拍手が聞こえる。 ○○○○○ パチパチパチ。 屋上の入口から拍手が聞こえる。 俺と七倉は入口に眼を向ける。 そこには手をたたく、ヤツらがいた。 「涙なしには見れない戦い。ご苦労様でした。 さーて、此処からは笑いと血が絶えない戦いをしようか。」 「飯島さん、かわいそうにね。まぁどうでも良いけど。」 ムカつく。こいつらの態度、言葉がイライラする。 七倉の気持ちを完全に無視したその行動が。 アイツが何故飯島のことを知ってるかと少し疑問に思ったが、 そんなことはどうでもいい。 「JOKER、うるさいからあの子、殺してあげて。」 「あいよ。」 女の方に促され、 JOKERは腰から長い刀を抜いた。 抜いた瞬間に、姿が消えた。 JOKERはいつの間にか、 飯島の元に移動し、笑い続ける飯島を、 首からばっさりと躊躇なく切り落とした。 七倉もその様子を眼も逸らさず見ていた。 もうダメだ。俺はこいつらを殺す。 バラバラにして殺す。 存在を消す。遺品など残らないように殺す。 七倉の眼から涙が消える。 JOKERはゆっくりと元の場所に戻っていく。 すると二人がフードを取る。 男の方は全然知らないが、 女の方は・・・・・・・・・・知っている。 「オマエは、・・・三浦。」 「久しぶりね。鏡崎くん。」 JOKERが口を挟む。 「知り合いか。」 「私の教え子なの。」 @ 俺の学校は一貫学校で、 六年間、担任が代わる事がない。 例外を除いて。 俺がまだ中学校に行ってた頃、 その担任が三浦だった。 @ 三浦 桂 短髪の黒髪。眼の色は茶色。 俺の担任で、どこにでもいる学校の先生。 学校いる時の性格はとにかく温厚な人だった。 @ JOKER 短髪に黒髪。短髪というより坊主。 眼の色はカラコンをしているのか赤色。 手に死神の刺青。それ以外は不明。 @ 「教えてもらったことなんて何もないがな。 何で三浦がその服を着ている。」 「似合うでしょ。」 「似合わねぇよ。それより質問に答えろ。」 「聞く前に考えなさいよ。」 「うぜぇ。もうどうでもいい。かかって来い。」 JOKERがまた口を挟む。 「先生にむかってその態度はないんじゃないか。」 「オマエ、コロス。」 「じゃ、お前の相手はオレがしてやるよ。 三浦、女は任せた。」 「分かったわ。」 「いくぞ、七倉。殺すぞ。」 「うん。」 七倉が頷いてからすぐに、 二人同時に飛び出す。 ○○○○○
俺はJOKERに突っ込んでいく。 JOKERは動きもせず、ただ立っている。 俺が行くのを待っているかのように。 「余裕だな。」 と言いながら、ベルトからダガーを逆手で抜く。 抜いたダガーを強く握り、距離を詰める。 JOKERはまだ動きもしない。 もうダガーがあたる距離まで来た。 するとJOKERが動いた。 長刀を柄に戻し、しゃがみこみ眼を瞑る。 俺は止まってしまった。 頭に上った血が強制的に下がってくる。 俺は否応なしに冷静になった。 俺のダガーが当たる距離って事は、 アイツの獲物はもう確実に俺を捕らえることが出来る。 やばいと思い急いで後ろに退き、 距離をあける。 「バカだと思っていたのにそうでもないんだな、 お前。懸命な判断だ。」 言いながら体勢を戻す。 「今、俺を殺さなかったのはわざとか。」 「あぁ。解かってるじゃないか。 早く殺せばその分楽しさが減るからな。」 「そうか。なら楽しんでもらわないと。」 俺はあけた距離を一気に詰めながら、空いた手でナイフを抜き、 JOKERに投げつける。 JOKERは長い刀を横に流し、 ナイフを弾く。 俺はその瞬間を狙っていた。 ナイフが弾かれた瞬間、 中に入り、ダガーに力を込め、連斬。 右。左。 上。下。 右斜め上。右斜め下。 左斜め上。左斜め下。 するとそのすべての攻撃が、 JOKERの持っていた刀により防がれた。 JOKERの刀が小さく見える。 眼の錯覚か・・・・・・。 しかし、今はそんなことどうでもいい。 この間合いを逃す手は無い。 そこからさらに、ダガーで斜めに切り下ろす。 JOKERは受けず、鮮やかに俺の攻撃をかわし、 膝を俺の腹に入れる。 俺は口から血を吐く。 半端じゃない蹴りだった。 一発食らっただけでかなりきつい。 JOKERの攻撃はまだ続く。 入れた足を瞬時に引き、 回し蹴りをして俺をふっとばす。 俺は地面を転がる。 肘や膝の服が破れる。 俺はようやく止まった。 仰向けになり、空に綺麗な星空が見えた。 強い。友成やクリスなんて比べ物にならない。 でも、殺す。あいつだけは殺す。 俺は自分に言い聞かす。 ゆっくりと立ち上がる。 「今ので死んだかと思ったぜ。 まだまだ、俺を楽しませてくれよ。」 「あぁ、これからだ。」 と言いながらもこいつを倒す方法が見つからない。 あの長い刀に接近戦に強い格闘。 それにまだ分からないあいつの能力。 俺の武器はこのダガーとナイフ。 それに死前という能力。 どちらにしろ俺には接近戦しかできない。 しかも、手首と足首の怪我。 俺に不利な状況がここまで整っている。 最高。もう最高。もう死ねと言われているようなものだ。 だったら死んでやるよ、あいつを道連れにして。 俺はまた無謀にも突っ込んでいく。 「前言撤回だな。やっぱりお前はバカだ。」 JOKERはまたしゃがみあの体勢をとる。 今度は止まらない。 そのまま突っ込んでいく。 そして確実にダガーが当たる距離にきた。 ダガーを横に流す。 すると 「・・・・・・・・・・・・・・・横一文字・・・・・・・・・・・・・・。」 と声が聞こえた瞬間、 腹から真っ二つにされた感じがした。 俺は自力で離れまた距離をとる。 俺のダガーにも感触はあった。 JOKERの頬から血が伝う。 でもそれよりひどいのが俺の腹。 服はもちろん腸がはみ出るくらいまで深く斬られている。 膝をつく。 腹に力が入らず、体が曲がる。 「やるな。横一文字を食らっても生きてるなんて。」 「わ・・るい・・な。まだ・・し・・ね・・な・・・・・い・ん・・だよ。」 しゃべるだけ口に血が押し押せてきて、 腹からも血が出る。 「楽しめなかったが相手がもう死にかけじゃ仕方ないな。 終わりにしよう。」 JOKERは俺にゆっくりと近づいてくる。 俺にはもうコイツと向き合う力がない。 コイツをズタズタに斬り、 殺してやりたかったがもう無理らしい。 JOKERは俺の前に立つ。 するとJOKERは、 「まったくあの時の外人の始末といい、 この餓鬼といい最近のヤツは弱いよな。」 そうJOKERが言った時、 クリスの死ぬ前の状況が浮かんだ。 たしか倒れるクリスを長い刀を持ったやつが殺した。 友成の話じゃバラバラにされて。 「オマエ・・・・が・・・・ク・・・リス・・・を殺・・・した・・の・か。」 「まだ、しゃべれたのか。 まぁ何を言ってるのか分からないがな。早く死ね。」 俺はすっと立ち上がり、 JOKERの体にダガーを突き刺した。 「やるじゃねぇか。餓鬼。」 「オマエはやっぱりコロス。」 「でも、まだまだ。」 すると俺の体をJOKERの長い刀が貫通した。 意識がなくなりそうになる。 だがまだ死ねない。 眼の前のヤツが死ぬその時まで。 意識とは反対に手から力が抜ける。 JOKERは俺を突き刺した刀を上げる。 俺は刀に刺されたまま中に浮く。 「じゃな餓鬼。」 そう言い、JOKERは刀を俺から抜く。 抜かれた瞬間、体から大量の血が出る。 俺は自分の血で出来た血だまりに落ちる。 抜いたと思われた刀は、抜いたんじゃないかった。 縮んだのだ。 今、JOKERの手に握られてるのはナイフのように短い刀。 瞼が半分閉じた俺の右目に写る。 俺にはまだ何とか意識はある。 JOKERは体に刺さるナイフを抜き、 俺に投げつける。 「もういい加減に死ね。」 そう言いJOKERは俺の体にナイフを突き刺した。 死ぬ。死ぬ。 死ぬ。死ぬ。 死ぬ死ぬ。死ぬ死ぬ。 死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ。シヌシヌシヌシヌ。 意識がなくなりかけていく。 なくなりかける意識の中で自分を罵倒する。 俺は自分の中の勝手なルールも守れないのか。 俺の邪魔をする人間を殺す。 俺の前に立ちはだかる人間を殺す。 そんな自分の中の勝手なルールすら守れないのか。 アァ、ホントニシニタイ。 アァ、ホントニシネ。 そんなことを考えていると、意識だけが強く戻ってくる。 もう何も出来ない俺に。 体はもうダメ。使い物にならない。 むしろないのといっしょ。 そんな痛みも感じない体に、動け、動け、 と命令を出し続ける。 動いている。体は動いている。 何とか動いている。 でも、動いてる感覚がない。 そんな体を動かし、 俺はまたゆっくりとよたつきながら、立ち上がる。 「あはははっははっははっははっはっはははは。マジでか。 そんな体になってもまだ向かってくるか。 はははっははっははっはっははっはは。死ねよ。」 「ま・・だ・・ま・・・だ・・・・・・死ね・・・ね・・・よ。」 JOKERにもう武器はない。 俺の背中に刺さりっぱなしだから。 俺は感覚のない足で動く。 体からはいちいち血が飛び出る。 それでも走り、ナイフ抜き、 JOKERに突き刺しにいく。 JOKERの前で体が止まる。 すると逆に突き刺された。 JOKERに武器はない。 なら俺は何に突かれているんだ。 体を見るとそこには、 JOKERの腕が鋭利な刃物のようになり、突き刺さっていた。 「悪いな。これが俺の能力だ。 俺は触れるものすべての状態を変化できるつまり状態変化。」 そうかそれですべてが分かった。 刀が縮んだことも俺がこんな状況になっていることも。 だがこれで終わりじゃない。 俺の今の体は痛みを感じない最強の状況。 腹に刺さったJOKERの手の感覚さえ伝わってこない。 たぶんはみ出た腸を破り、その奥まではいってるだろう。 でも感じないものはしかたない。 しかも、こんなに距離が近い。 手を伸ばさなくても触れられる距離。 能力を使わずに殺したかった。 JOKERをナイフでヅタヅタにしたかったが仕方ない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・コロス。 「俺・・の・・のう・・りょく・・も・・みせてやるよ。」 渾身の力を込めて言葉を口にし、相手の顔に触れる。 込められるはずもない力を込めて。 するといつも通りに頭の中に映像が流れてきた。 それはいつもなら勝手に再生される映像。 しかし、今日は動いていない。 停止状態になっている。 俺は念じる。早く動け。 アイツが死ぬ状況を写せ。 どうせならズタズタになって死ぬアイツの死を。 すると映像は終わり、現実に戻る。 眼の前のアイツはまだ生きている。 どうなってる。 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねシネ。 すると、俺の体に感覚が戻る。 いつもどおりの感覚が。 JOKERの手を掴み、体から抜く。 「どうなってやがる。」 JOKERは必死にもがいている。 しかし、無駄。 JOKERの力は傷を負っているせいで、 少しだが弱っている。 しかし俺はいつも通り、いやそれ以上の力がある。 俺はJOKERから手を離し、 ベルトからナイフを右手と左手にとる。 反撃する暇を与えず、JOKERの体を 下から順番にしかも一瞬にして解体した。 足首、モモ、 股間、腹、 腕、手首、 首、口、 耳、鼻、 目、頭。 すべてをバラバラにしてやった。 俺の思い描いていた通りに。 無抵抗なJOKERを。 JOKERの死体は血だまりの中に バラバラになって散乱した。 あぁ、爽快な気分だ。 もう死んでもいい。何もかも終わったから。 俺の意識は徐々にでは無く一瞬で失った。 JOKERがバラバラになった血だまりに倒れる。
○○○○○
私は三浦に向かい、走っていく。 金剛棒を握り締め。 JOKERには眼も向けずに走る。 三浦は、背中から不思議な剣を出し構える。 その剣は、剣の中心から交互に七つに刃が出ている。 故に七支刀。その刀の名称。 私はその剣と相手の動きを見ながら、 止まらず、走る。 相手により早く攻撃をするため、 金剛棒を地面に立て、高飛びの要領で飛ぶ。 上から自分の体重もかけ、 重い打撃を喰らわす為、思いっきり振り下ろす。 それを三浦は真上に飛びかわす。 私もその後追いかけ地面を蹴る。 いきなり空中戦を仕掛ける。 相手と同じ高さまで飛び、防ぐ面積の少ない金剛棒の端で突きを放つ。 三浦はその面積の少ないところに、 七支刀の剣先を当て金剛棒を弾く。 弾かれた力を利用して空中で回転し、 遠心力で金剛棒を振る。 三浦はそのままの状態から剣を振り、 私の金剛棒をまた弾く。 弾かれたせいで私の手から金剛棒が離れ、 地面に落ち転がる。 私は急いで着地し金剛棒を拾う。 拾った私の後ろから剣撃が飛ぶ。 金剛棒を盾に防ぐがその後ろから来た剣撃は、 下から鋭く上に上がる攻撃だった。 防ぐことは出来たが体が宙に飛ばされる。 そんな私に三浦は、連撃を放つ。 斜め。横。縦。右。左。下。 金剛棒を連撃に合わせ放ち、すべてを防ぎきる。 地面にようやく着地できた。 「ふふ、貴方、なかなかやるわね。」 「。」 三浦はそんな偽りの言葉をかけてくる。 私にはしゃべってる余裕はない。 私は一回、呼吸を整え走り出す。 三浦も私に向かい走ってきた。 三浦は思いっきり剣を振る。 私はそれに合わせ金剛棒をぶつける。 激しい剣音が鳴り響く。 お互いの武器をぶつけたまま、睨み合い、 二人とも引こうとしない。 睨み合いが続く。 お互いに同じタイミングで引き、 再びぶつける。 ・・・一撃。・・・・一撃。 ・・・・・一撃。・・・一撃。 ・・・一撃。・・・・一撃。 ・・・・・一撃。・・・・一撃。 一撃が何度も重なり連撃となる。 そうしてどちらのかの威力が衰えるまで金剛棒と七支刀が放たれる。 二人の間の剣勢は衰えることを知らない。 相手が七支刀を振る限り、こちらも金剛棒を放つ。 ・・・一撃。・・・・一撃。 ・・・・・一撃。・・・一撃。 ・・・一撃。・・・・一撃。 ・・・・・一撃。・・・・一撃。 三浦の剣撃は最初の一撃目から一向に威力が落ちていない。 逆にあがることも無い。 そんな威力の落ちない剣撃がずっと同じペースでくる。 こっちにはそんな余裕が無い。 一撃、一撃に渾身の力を込めて放つ。 私としては一刻も早く終わらしたい。 もう、今放った攻撃の威力を保つことが出来ない。 自然と力が抜けた。 「甘いわね。」 三浦がそういうと、金剛棒を弾き返し、 弾いた剣を切り返し私の右肩を三浦の七支刀がかする。 否、あの剣には剣の中心から刃が出てる。 その剣は私の肌を切るのではなく削っていった。 まるでのこぎりの様に。 肩の肉が持っていかれる。 「うぅ。」 思わず姿勢が崩れる。 そこにさらに追撃がくる。 左手で傷口を押さえ、 右手に持つ金剛棒で何とかその攻撃を防いだ。 後ろに飛び距離をあける。 しかし、三浦はあけた分の距離を一気に詰めてくる。 「休憩をあげたつもりは無いんだけど。」 言いながも距離を詰める三浦。 休む暇さえ与えてくれない。 私は、一撃一撃を何とかかわす。 金剛棒で防ぎたいけど、防いだ瞬間、さっきみたいにまたやられる。 今はなんとか、かわせるけど、 もうそろそろ限界だ。何とかしないと。 三浦は徐々に迫ってくる。 足が躓き、体勢が乱れる。 剣を避けきれず右足の股が削られた。 腕の傷より深く。 血が飛び出る。 筋肉まで削られている。 足が血で赤く染まっていく。 足から崩れ、しゃがみ込む。 しゃがみ込む私に三浦の手が、襲いかかる。 逃げられない。 笑いながら迫る三浦から。 避けられない。 そのまっすぐに迫ってくる手へから。 三浦は微笑みながら、私の左足に触れる。 触れられた足から鳴ってはいけない音が鳴る。 バキィ、 やばい。・・・・・・足が痛い。 危ない。・・・・・・立てない。 死ぬ。・・・・・・・・・・・・足が動かない。 「残念ね。貴方はここで終焉ね。 だって貴方はもう立てない。足が折れちゃったから。」 三浦はまだ微笑を浮かべている。 その顔が今の私には、悪魔の微笑みに見える。 何とかしたい。 何とかしたいがどうにも出来ない。 右肩は削られ、力が入らない上に血が止まらない。 右足も削られ、体重をかけれない。 左足は骨折し、機能停止。 どうすればいい。どうすればいい。 どうすればいい。どうすればいい。 そうだ。考えろ。 私は人より優れた頭を持っている。 だから、考えろ。 どうすればいいか。 でもそれは、数学の三角形のコサインを求めるより難しい。 画数の多い漢字を読むより難しい。 社会の歴史を覚えるより難しい。 理科の化学式の答えを出すより難しい。 英語の長文を訳すより難しい。 あぁ、答えが出てこない。 どこを探しても何を導きだしても答えが無い。 答えがない。=死。 見つけ出せない。=助かる方法が無い。 もう終わりだ。ここで終わり。 頭の回転を止める。初めて解けない問題だ。 諦め。もう無理だという諦め。 ここで私は死ぬ。もう死ぬ。 三浦の手が左腕に触れる。 バキィ、バキィ、 もう左腕も上がらなくなった。 これでもう私の四肢は潰れた。 もう本当に何も出来ない。 もう導き出せるものは死だけ。 地面にうつ伏せに倒れ込む。 地面は冷たい。 私がそうなることを促すような冷たさ。 「もう踏ん張るのもやめたの。 じゃ最後くらい痛みを感じないように頭を串刺しにしてあげる。」 三浦は七支刀を振り、 私の頭の上で剣を構える。 頭の中に今までのことが蘇る。 やっぱり死ぬ前ってこんな感じなんだと思う。 それは友達の思い出や家族のこと。 そういえば、私がこんなことをしているのも、 ・・の・・のため。 子供の時に見た、・・の・・。 ごめん。・・さん、・・さん、・・ちゃん、・・ちゃん。 私もそっちに行きそう。 眼を閉じ、自分に別れを告げた。 「終わりね。」 三浦は軽く七支刀を持ち上げ、 私に七支刀を突き刺す。 ズサァ ナニかが突き刺さる音がする。 それは、私の頭に突き刺さる三浦の七支刀の音ではなかった。 眼を開け、三浦を見る。 三浦の体から私の顔に向かい血が落ちる。 そこには三浦の体を 貫通する剣のような包丁のような刃物が見える。 でも誰かはわからない。 誰が私を助けてくれたのか分からない。 誰が三浦を刺したのか。 「規則(ルール)は守れ。」 その声は妙に低く、 聞き覚えのある声だった。 「何故、貴方が此処に。」 「お前らの行動を監視していたからな。」 「ふふ、規則を破っていたこともすべて知っているのね。」 「すべてな。死ね。」 そう言うと三浦の体から剣を抜き、 振り向こうとする三浦を誰かは素早い剣の動きで見事に分解した。 三浦の血と共に分解された体が顔に落ちてくる。 眼に血が入り、開けられない。 靴の音だけが遠ざかっていく。 お礼も言ってないのに。 私の体から血が抜けすぎたのか、 相手がいなくなって安心したのか、 意識が無くなっていく。 そんな中、去って行く靴音は反対に 近寄ってくる靴音が聞こえた。
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