○○○○○





眼を開ける。


自分の家の天井じゃない。
平らで白い。

体全身にいつもと違う感覚がする。

何故かここは・・・・・・・病院だ。
病院であるのにどこか小汚い感じがする。

しかし、布団は真っ白で気持ちがいい。

視線を横にやるとベットからはみ出た腕に
注射が刺さっており、点滴がされている。

その向こうに、隣のベットに寝ている七倉がいた。
七倉はまだ寝ている。

七倉を見ていると病室のドアが開く。

ドアを開けた人物は俺のベットに近づき横に立つ。
それは久しぶりに会う拓海だった。

「やぁ、眼が覚めた。」

「あぁ、拓海が病院まで連れてきてくれたのか。」

「まぁね。それが今回の仕事だったから。」

「じゃ、礼は言わないぞ。」

「いいよ。今回は。」

拓海の声にどことなく優しさを感じた。
顔はどこか悲しげだ。

「光ちゃん。まだ眼が覚めないね。」

拓海は七倉の方を見ながらボソッと呟く。

「俺より重症なのか。」

心配になる。
あの時は自分のことに精一杯で、
七倉のことをすっかり忘れていたから・・・・

「いや、仁君よりはまだましな方だと思うよ。」

安心する。
例えウソだとしても、
そう言ってくれたことに。

「そうか。拓海、悪いけど体を起こしてくれないか。」

「わかった。」

体がずっと寝ていたせいか、体が疼く。
拓海はゆっくりと俺の体を起こしてくれた。

すると、拓海は、席を外そうとする。
拓海は拓海で落ち着かないのだろう。

「ジュース買ってくるよ。注文は。」

「オレンジジュースで。」

「はいよ。」

拓海は部屋から静かに出て行く。
俺は視線を窓にやり、外を眺める。

空は雲ひとつ無い快晴。
気持ちが清清しい。

昨日のことなんて忘れさせてくれるかのようだ。
しかし、その状態でいると傷が少し痛む。

昨日のことを忘れるなというように。

内部から外部に何かが飛び出そうとするような痛さ。
でも、我慢できない痛さではなかった。

俺は再び外に眼を向ける。

「綺麗に晴れてるね。」

隣から声が聞こえる。
横を見ると七倉が眼を開け、俺を見つめていた。

「よぉ。大丈夫か。」

「うん。なんとかね。」

「無理すんなよ。」

七倉は黙ってうなずく。
七倉は上を向き、俺から視線を外し聞く。

「仁くんは殺したの。アイツを。」

七倉が俺を仁くんなんて呼んだ。
でも別にたいしたことじゃない。

少し気になっただけ。

「あぁ、殺した。アイツは自分が死んででも殺したかったからな。
七倉は、倒せたのか。」

「全然ダメ。倒せなかった。
でも誰かが代わりに殺してくれた。」

「たぶん拓海だろ。
俺たちを病院に運んでくれたのも拓海らしいぜ。」

「そうなんだ。」

素っ気のない返事が返ってきた。
七倉は拓海が助けてくれたとは思ってないらしい。

でも、俺にわかるのは、
この病院まで連れてきてくれたのは拓海だという事だけ。

でもそれもどうでもよかった。
こうして生きているから。

拓海が戻ってきた。
手には三つのオレンジジュースを持って。

拓海は七倉のベットに近づく。

「光ちゃんも眼が覚めたんだね。」

「はい、いろいろありがとうございます。」

「いいよ。はい、オレンジジュース。」

七倉は拓海からオレンジジュースを受け取る。
七倉は受け取っただけで飲もうとはしなかった。

俺も拓海からオレンジジュースを受け取る。
俺はすぐにふたを開け、一口飲む。

拓海も自分の分があるのに飲もうとしなかった。

なんだか変な空気が流れる。
俺は昨日のことを思い出し、黙り込んでいた。

そうだ。すっかり忘れていたことがある。
それは俺の能力。JOKERを殺す時だけいつもと違った。

考える。
考えて十秒。

自分で考えても答えが出ないことに気づく。
ちょうどいいところに拓海がいる。

考えても仕方ないし聞いてみることにした。

「拓海、能力って変わるものなのか。」

「え、能力。代わるわけ無いよ。
能力はその人間が生まれてくる時に授かるものだから。」

「じゃ能力を二個持つことは出来るのか。」

「普通じゃ無理だね。何か特別なことをすれば別だけど。」

「例えば。」

「遺伝子操作。
能力を持ってる人間に手を加えれば何とかなると思うよ。」

考える。
考えてもそんなことをされた記憶は無い。

「俺がJOKERを殺す時、
今までの能力と違ったんだよ。」

「どんな風に。」

「今までは、人の死を見て、相手が気絶するだけだった。
でもJOKERの時は、なんていうかな・・・・・。
自分の思い描いた死が眼の前で起こったと言うか、そんな感じがした。」

「俺にもよく分からないけど、
たぶん、今までは仁くんの能力だけを使っていたけど、
能力を制御できるようになって、別の力が加わった。
つまり、簡単に言えば、今までの力は平均の力。
それが制御できるようになって上にも下にもいく様になったんじゃないかな。」

「なるほど。」

頷きながらも拓海の説明がいまいち分からない。
バカだからしかたないか、と開き直る。

それにそんなに重要でもないだろうと思い、
そのことを頭から消す。

そして、みんなでオレンジジュースを飲みながら、
たわいも無い話をしていた。

するといきなり拓海が切り出す。

「そうだ。先生に聞いたら、
二人とも二週間は入院だって。」

「マジかよ。二週間も寝たきりかよ。」

「大丈夫。後三日だから。」

「どういうことだよ。」

「私たちはその間ずっと寝てたってことですよね。」

俺より理解の早い七倉が答える。

「正解。だから後三日は此処にいてもらうよ。」

「それは良いけど、入院のお金とか準備とかしてないんだけど。」

「お金は心配しないで良いから。
仁君の服、取りに行って来るよ。」

「光ちゃんのは愛ちゃんに頼んで持ってきてもらうから。」

「じゃ。」

拓海は足早に部屋を出て行った。
拓海が出て行った後、七倉が教えてくれた。

「お金、SAPから出てるんだよ。」

「へぇー。SAPって金持ちなのか。」

「政府から援助してもらってるんだよ。」

「マジでか、ラッキー。」

俺は金を使わずにすみ、喜んだ。






○○○○○







病室から出て、長い廊下を電話しながら、
ゆっくり歩き、病院を出る。

病院を出て病室で吐いたウソが胸を痛める。
本当は後一日で退院できるぐらいに完治している。

二人は能力者。

普通の人間より傷の治りが早いのが当たり前。
しかも、ずっと眠っていたんだから傷の治りも早い。

でも、オレは二人を外に出したくなかった。

それは、JOKERたちの死体やなんかの処理が遅れ、
一般人に死体が見つかってしまったから。

もちろんそこには仁君の血や光ちゃんの肉片があったわけだ。

警察もすぐに現場検証をして、
すべてを知っている。

今、二人は警察から眼を付けられ、
もし見つかれば捕まってしまう。

この事態を何とかするための自分で作った三日間。

事実をもみ消すぐらい簡単だが、
目撃者を消すとまた大事になる。

いろいろもみ消すパターンを考えていると
いつの間にか仁君の家に着いた。

家に入り、仁君の服をタンスから適当に出す。
床に積み上げた服を台所にあったビニール袋に詰め込む。

ついでに部屋にある雑誌や漫画も
ビニール袋に詰め込み始める。

ピンポーン

詰め込んでいる最中に呼び鈴がなる。

「はーい。」

とりあえず返事をした。
返事をしてきずく。ここは仁君の家。
オレが出ていっていいものかと考えるが返事をした以上しかたない。

玄関に向かう。
向かってる間にもう一回呼び鈴がなる。

「はーい。」

返事をしてドアを開ける。
ドアの向こうにはSAPのローブを着た二人の子供。

やばい。

脳が即座に命令を出してくる。
一人の子供が釘バットを振りかぶる。

相手が動くより先に後ろに引く。
一人の子が釘バットを地面に打ち付けていた。

顔を見なくても二人が誰なのか、
二人いることと釘バットを見て分かった。

「何故、君たちが此処にいるだ。レオン、カレン。」

二人がフードをとり、顔を見せる。
二人は、顔を見合わせる。

「拓海だ。」

「拓海だ。」

「鏡崎仁じゃない。」

「鏡崎仁じゃない。」

「質問に答えろ。」

「お父さんに頼まれた。」

「お父様に頼まれた。」

「小沢代表が。」

@

小沢レオン・小沢カレン

彼らは小沢真一という自民党の代表を勤める人の双子。
双子ながら両方とも能力を持ち、
その年齢の低さに対象的な能力の高さと
父親の後押しもあり、SAPに入った。

二人とも紫の髪で肩までの髪の長さ。
さらに紫の瞳。それにいつも同じ服を着ている。
そのため見慣れていない人間はどちらがどちらか分からない。
しかも二人は同じことを言し行動も同じ。
それだからますます分からない。

唯一違うのは小沢代表の呼び方。
レオンはお父さんと呼び、カレンはお父様と呼ぶ。

今は右に立ってるのがレオン。
左に立っているのがカレン。

二人して都内の有名学校に通い、頭はかなり良い。
学校の中でも一、二を争う凄さ。
そのせいか少し生意気。

@

「どうして仁君を。」

「人殺し。」

「人殺し。」

「もういい君たちじゃ、話にならない。
小沢代表に会ってくる。」

「ダメ。」

「ダメ。」

「何でだ。」

「拓海、今怒ってる。今会ったら、お父さん殺す。」

「拓海、今怒ってる。今会ったら、お父様殺す。」

「悪いけど、これは俺の仕事だ。
邪魔するようなら、消すよ。」

「今日の拓海、怖い。」

「今日の拓海、怖い。」

オレは腰からオメガを抜き、撃つ。
高速で二弾。

オメガ。

いつも背中のベルトのあたりに隠して持っている拳銃。
色は黒でオートマの拳銃。

それを笑いながら、横の壁に逃げてかわした。

オレはもう一丁の拳銃、カオスを腰から抜き、
ドアの周りの壁を打ち抜く。
弾にして二十五。

カオス。

オメガの兄弟銃。
色は白でこれもオートマの拳銃。

それを放った後、両手にカオスとオメガを握ったまま、
全力で走り、外に出る。

ドアを出た瞬間、釘バットが襲い掛かってきたが、
・・・・・・・・・・・・・・・・・・無駄。

出てくるのを予測して振っても、
俺の出て行くスピードは秒速。

そんなものが、かする筈も無い。
ドアから飛び出し外の道路に出ていく。

ドアのところには、
釘バットを地面に打ち付ける二人の姿があった。

二人はお互いに顔を見合わせてから、
ほぼ同時にオレに向かって走ってくる。

オレは二人が接近するまで銃を構えない。
オレには時間が無い。

自分で作った後三日。

三日には今日も含まれている。
だから、こんなところで時間を使っている暇はない。

一刻も早く眼の前の二人を倒し、
彼らの親に一刻も早く事態をもみ消してもらわないと。

だから決める時は一撃で。

二人を殺せば、小沢代表もどうでるかわからない。
でもその時は強制させれば良いだけのことだ。

二人は交互にクロスしながらオレに向かい走ってくる。
そろそろ。
引き金に指をいれ、いつでも撃てる準備をする。

標準はどうでも良い。

接近してくる相手に標準などいらない。
ただ相手の頭めがけて打つだけだから。


あと三。


手を前に出す。


あと二。


引き金を引く。


あと一。


弾が銃から放たれる。


放たれた銃弾は標準こそ合ってないものの、
真っ直ぐに二人目掛けて飛んでいく。

銃弾は二人の眼の前まで飛んでいく。


これで終わり。


もう終わり。


あの距離で銃弾は避けられない。
ああ、この世界に避けられるものなんていない。


超人でもいない限り。



彼らは銃弾が当たる寸前で笑って見せた。


どちらか分からないが、
一人はそれこそ銃弾より早い動きでしゃがみ簡単にかわす。

もう一人も同じ動きをして銃弾をかわす。

やばい。

オレは舐めていた。
超人なんかいないと。
あんな子供にオレの放った銃弾がかわせるはず無いと。

だが二人は能力者。
もうその時点で超人。
普通の人間であるわけがない。

しかもSAPに所属して何回も
戦闘という名の殺戮を繰り返してきた。

そんな二人にオレの考えていた行動が
思い通りにいくはずが無い。

安易過ぎた。

愚かだ。

自分も彼らと同じことをやってきたのに。

一人が低い姿勢で俺の足元まで来て、
オレに向かい釘バット振る。

かわせる筈も無い。
こんなにまじかにいるんだから。

銃すら撃てる時間も無い。
オレは簡単にバットで打ち上げられる。

腹の所々に痛みが走る。

釘のせいだ。
あのバットに刺さった釘のせいだ。

空中に上げられたオレを
さらに背後から叩き落す一撃が来た。

背中にもバットで撃たれた痛みと
皮膚を破って中に入ってくる痛みがある。

オレは地面に叩きつけられ、
一度バウンドして地面に落ちる。

きっと背骨をやられた。

お腹よりも背中の方が痛みが激しい。
何とか立てそうだが、そう長くも立っていられない。

二人は相変わらず笑っている。
まるで天使のように。

「拓海、もうお終い。」

「拓海、もうお終い。」

「甘く見るなよ。」

そう言い、手の平を地面につけ、腕を支えに体を起そうとすると、
腕を蹴られまた倒れる。

「もう、終わり。僕たちが殺す。」

「もう、終わり。僕たちが殺す。」

二人が釘バットを振りかぶる。

オレは倒れながらも、まだ拳銃を握っている。
レオンとカレンが振り下ろす寸前で、
釘バットに鉛玉をぶち込もうと考えている。

しかし二人はなかなか釘バットを振り下ろさない。
むしろ振り下ろそうとしていない。

空を見つめている。
オレも顔を上げ、空を見る。

するとそこに何か飛んできた。
それは、いきなり空中で爆発する。

二人は飛んでオレから引く。
煙がオレを包む。

辺りがまったく見えない。

どうにも出来ず、体を起しかけると、
誰かが俺の体を持ち上げ、後ろに引く。

煙から出てようやく誰か分かった。
それは愛ちゃんだった。

病院の廊下を歩いてる時に
光ちゃんの着替えをとり着てくれるように連絡をしといた。

「大丈夫ですか、拓海さん。」

「何とかね。」

「事態は読み取れないけど、
どう見てもこれは裏切り行為ですね。」

「そうだね。」

「後は私に任せてください。」

「そうするよ。」

愛ちゃんはオレを壁にもたれかけさせ、
二人へと向かい合う。

二人は愛ちゃんを見て、
不思議そうな顔をしている。

「人間凶器。」

「人間凶器。」

ボソッと一言、二人が呟く。








○○○○○








私は見慣れたローブを着て、
手に釘バットを持つ意味不明な二人の子供と向き合う。

なんだか負ける気がしない。
あの拓海さんがボロボロになっているのが分からない。

だって私の装備はまさに完璧。

外に出る時、(学校や遊びに行く時以外)
私は常に装備している。

腰に巻いている爆弾ベルト。
爆弾の数。三十。

肩からかけている爆弾ベルト。
爆弾の数。二十。

足に巻いている爆弾ベルト。
爆弾の数。両足で十。

もしもの時のポケットに入れているダイナマイト。
二つ。

しかもすべてお手製。

まさに完璧だ。

逆に言えばそれが欠点。
攻撃を絶対に食らえないという、紙一重。

でも、私にはこの張り詰めた感じが無いと戦えない。
このゾクゾク感が無いと無理。

私のもっとう(決まり)は、どんな状況だろうが楽しむこと。
それがこの状況を私に与えている。

私が突っ立てると、眼の前の二人は、顔を見あわて、
何かに頷き、私に向かい走ってくる。


あぁ、ゾクゾクしてくる。


・・・・・・・・・・・・楽しい。


私は腰から爆弾を二つ抜き、線を抜いて相手に向かい、
全力投球で投げる。

二人の前方二メートルぐらいで爆発。
爆風が私の横を通りすぎる。

なんて清清しい風だろう。
しかし、不快になってしまう。

二人がまだ死んでないことが。
だって、爆風に紛れて血の匂いがしてこなかったから。

二人は爆風に紛れ、空高く飛び
私に向かい釘バットを振りかぶる。

私は姿勢を低くしながら、爆弾をさらに二個手に持つ。

二人は着地前にバットを振る。
私はそれを必死でかわす。

後ろに引きながらも爆弾の線を抜き、
二人に向かい投げつける。

二人は地面にすぐ着地し、
私に向かい躊躇することなく向かってくる。

二人は前方に飛ぶ爆弾をバットで弾こうとする。
私はその行動に我慢しきれず、笑いをこぼしてしまった。

爆弾がバットに触れた瞬間、爆発。
私の爆弾はお手製。

線を抜いてから、何かに当たると爆発する仕組み。
何かに当たらなくても、時間が経つと爆発。


まさに完璧だ。


そう思いきや二人は、服や髪を焦がしながらも、
私に向かいスピードを弱めることなく走ってくる。

二人の持つバットは、釘が何本か抜け、
先っぽの方が無くなっている。

しかし、無くなった代わりに、
先っぽが尖っている。

さらに相手のバットを強くした気がするが・・・・・。


楽しい。


もうゾクゾクした気持ちが止まらない。


私はそんなことにかまわず、爆弾を次から次に手にとり、
線を抜いては二人に投げ続ける。


止まらない。


手が・・・・・・・トマラナイ。


二人の姿なんてもう見えないのに、


・・・・・・・・・・・・・・トマラナイ。


ベルトに手をやると、
肩からかけていた爆弾を全部投げていた。

ベルトを地面に捨て、腰の爆弾を手にとる。
爆弾を投げすぎたのか煙で二人がどこにいるのかすら分からない。

前、右、左、後ろ。
どこを見ても二人の姿がない。


ああ、ゾクゾクする。


そこに拓海さんの声がする。

「愛ちゃん、後ろ。」

そう言われもう一回後ろを向くと
私に手を触れる二人がいた。


ゾクゾクする。             


二人の能力がどんなものか知らないが、
もしかしたら、このまま死んでしまう能力かもしれない。




このまま・・・・死ぬ・・。




そう思うとゾクゾクする。





体から力が抜ける。
と言うより、何か無くなっていく感じがする。


・・・・・・・・期待はずれ。


私は足に触れる手を振り払い、
その場に前のめりになる。

二人は私から軽く距離をあけた後、
ゆっくりと近寄ってくる。

その眼は冷め切っており、
何も感じない瞳をしていた。

私は何とか立ち上がり、
手に持った爆弾の線を抜く。

抜く。

抜く。

抜けない。

しかし抜けない。
手に力が入らない。

抜こうとしているのに、手に力が入らない。


ゾクゾクする。


手で抜くのを諦め、口で線を抜き、
相手に投げる。

爆発。

返ってくる爆風がいつもより強く感じる。
二人はそれを食らってもゆっくりと速度を変えず迫ってくる。


ああ、ゾクゾクする。
もう、止まることが無いんだろう。


ゾクゾクする。


ゆっくり迫ってくる二人に恐怖すら覚えない。
二人は私に向かい釘バットを振る。

眼の前に二つの釘が飛び込んでくる。
眼の前で腕をクロスさせそれを防ぐ。

それは防いだうちに入ったのだろうか。
私の腕にはいくつも穴が開く。

二人は釘バットを無理やり抜き、
私の前で再度振りかぶる。

私の腕から血が吹き出る。
そこに血を弾き飛ばす銃弾が飛んでくる。

二人は私から離れ、
いつの間にか拓海さんの方に向かって走り出していた。

拓海さんを見ると両手に拳銃を持ち、
拳銃からは煙が上がっていた。

私は、腰から爆弾をとり、
拓海さんに向かい、全力投球をした。

爆弾が二人の上を通り過ぎる。

「拓海さん、撃って。」

その声に反応したのか、
私が爆弾を投げた時点で私の意図を理解してくれたのか、
銃弾をすぐさま撃ってくれた。

爆弾に銃弾が当たり爆発する。

私はその間に走り、拓海さんの元に行く。

二人は、爆発に巻き込まれる前に引き、
その場に立ち尽くしている。

拓海さんも自力で歩き、私も駆け寄る。

「ここからは二人で戦おう。もう時間が無い。」

「分かりました。幸い私たちは武器の相性が良いですからね。」

私は感情をかみ締めしゃべる。
私の中は、まだゾクゾクしていた。









○○○○○








愛ちゃんに駆け寄る。

お互い怪我を負い、
普通に戦える状況じゃない。

だから、これからは殺し合いになるだろう。

こっちにも時間が無いし、
これ以上、怪我をするわけにもいかない。

リスクはあるがなんとかしないと。
それがオレの仕事だから。

オレは両手に銃を強く握る。
愛ちゃんも両手に爆弾を持つ。

「愛ちゃん、体に力が入らないんだろ。」

「何で分かるんですか。」

「それがあの子の能力だから。」

「レオンの能力は相手の筋力を抜き取り、
自分の筋力へと変える力がある。
カレンは人の能力をそっくりそのままコピーすることが出来る。
さっき、愛ちゃんは触れられたから、
カレンの能力は愛ちゃんの能力と同じなわけ。」

「私の能力は相手の体から酸素を奪うこと。
それが今のカレンの能力。」

「そういうことになるね。」

「殺す方法は。」

「オレが愛ちゃんのサポートをするからカレンは無視して、
レオンを殺す。殺し方は任せるよ。オレはカレンを何とかするから。」

「分かりました。行きますよ。」

オレは頷き、両手の銃を構える。
愛ちゃんは走り、レオンに向かっていく。


レオンとカレン。


正直見分けはつかない。
しかし、今は分かる。

愛ちゃんの筋力を奪ったせいか、
少しだがレオンの方が少し大きい。

オレは小さいカレンに向かい射撃。
弾の数は二十。

カレンは銃弾にかすりながらも、
愛ちゃんに向かい走っていく。

銃弾は確実に当たっているのに、
カレンの表情は何一つ変わらない。

レオンはカレンのことなんて気にもしないで、
眼の前にいる愛ちゃん向かい走っていく。

愛ちゃんはカレンを無視して、
レオンだけを睨み走っていく。

オレは、なんとしてもカレンを止めなければ。

マガジンを抜き、新しいマガジンを装てんして、
再び射撃をする。

弾の数は四十。
さっきの倍。

そのうちの四発がカレンの足と肩にめり込んだ。
カレンは転がり、そのまま転倒している。

これでひとまずカレンはかたずいた。

次は愛ちゃんのサポート。
カレンが起きれば、またカレンに向かい撃つだけ。

カレンが起き上がらない間に、
少しでもレオンを死に近づけないと。

オレは愛ちゃんに当てないように、
援護する。

弾の数は二十。








○○○○○








後ろから銃弾が飛んでいく。

しかしそれを避けもせずレオンは、
私に向かい突っ込んでくる。


ゾクゾクする。


死が迫ってくるような感じがする。


レオンの体を銃弾がかすり、
体からは血が流れ出る。

私は、両手に持った爆弾の線を口で抜き、
走りながらも相手に投げつける。

爆風に吹かれながらも、
レオンがいるであろう位置に向かっていく。


トマラナイ。ゾクゾクした気持ちが・・・・・・。


それを待っていたのかレオンは、煙に紛れジャンプし、
空中から私に襲い掛かる。

いい。

最高な展開。

ゾクゾクする。

空中に飛んだレオンにいくつもの銃弾が襲い掛かる。
それは、まるで横に降る雨の様だ。

私はそれにあわせ、両足に巻いていた、
爆弾のベルトを両方とも取り、空中に投げつける。

私は投げた後、急いで背を向け走り出す。


ゾクゾクする。


すると後ろから何かがぶつかって来た。
それは空中にいた、レオンが銃弾を体中に浴びながらも、
私に投げつけた釘バット。

それは私の背中に刺さり、私はその場に倒れこんだ。
次の瞬間、大爆発が起こった。

地面が揺らぐくらいの大きな爆発。

体が吹き飛びそうなぐらいの爆風が来る。
地面に必死にへばりつき、何とか耐える。

爆風に耐えながらも、
その中に血の香りが混ざっていたことが分かった。

なんて良い香りなんだろう。

爆風が止み、煙が立ち込めるなか、
レオンの肉片が飛んでくる。

私の周りに五、六個の肉片が飛んでくる。
私の傷はそんなにひどいものではない。


・・・・・・・・楽しい。

・・・・・・・・・・ゾクゾクする。

人を殺すのが・・・・・・・楽しい。

相手の血を見ると・・・・・・・・・ゾクゾクする。


ああ、もう頭がいちゃいそうなぐらい。


私は、倒れたまま、顔を伏せ、
声も出さず、ケタケタ笑っていた。








○○○○○








俺のところに肉片が飛ぶ。
あぁ、やっと殺せた。

傷もそんなに負っていない。

何とかなりそうだ。
あと一人ぐらいなら何とかなる。

風に煽られ、煙が消えていく。

そこには背中に釘バットが刺さって倒れる愛ちゃんと
ゆっくりと立ち上がるカレンがいた。

オレは標準をきっちり合わせ、
カレンに向かい銃弾を打ち込む。

銃弾はカレンの両肩に当たり、
カレンは倒れる。

しかしまた起き上がる。
ゆっくりと。

情けをかけて頭は狙わなかったのに、
あの少女は命がある限り何度でも立ち上がってくる。




ゆっくりと。




しかたがない。
次で仕留める。

狙うは心臓と頭。
標準を合わせ、引き金を引く。

それは一ミリもづれることなく、
彼女の心臓と頭に命中した。

頭から脳みそが飛び散り、そこら中に血を撒きちらし、
彼女は倒れた。




ゆっくりと。




オレは腰に銃をしまい、
愛ちゃんの元へと駆け寄る。

「大丈夫かい。」

「大丈夫です。それより背中のバット抜いてもらって良いですか。」

「分かった。抜くよ。」

愛ちゃんの体を押さえつけ、
バットを抜く。

血が流れ出るがそんなに多い量じゃない。
傷が深くないせいだろう。

愛ちゃんの手を持ち起すと
愛ちゃんが笑っているふうに一瞬見えた。

たぶん気のせいだと思い、
気にせずアパートに二人で入っていく。

その後、仁君の部屋で互いに、
応急処置をし、荷物を持って部屋を出る。

「愛ちゃん、お願いだけど仁君の荷物も
持って行ってあげてほしいんだけど。」

「分かりました。でも拓海さんは病院、
行かないんですか。」

「やることがあるから。」

「じゃ、お疲れ様です。」

愛ちゃんはそう言うと一人、
病院に向かってくれた。

オレはその場で携帯を取り出し電話をする。




「鏡崎さん、頼みたいことがあるんですけど。」