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ドン、ドン


病室で七倉としゃべっていると、
病室のドアに何かがぶつかる。

「ごめーん、開けてくれない。」

聞き覚えのある声がした。
俺より早く七倉が反応する。

「愛だ。仁くん、開けてあげて。」

「自分で行けよ。七倉の客だろう。」

「開けてあげて。」

「・・・・・・・・・・。」

開けてあげてと言う七倉の眼に一瞬殺意があった。
素直に言う通りにした方がいい。
俺のいつも動かない脳がフル回転して俺の体に信号を送る。

俺は渋々ベットから降り、ドアを開けに行くと、
そこには所何処に包帯を巻き、
ビニール袋と紙袋をいっぱい提げた桑本がいた。

「どうしたんだよ、お前。」

「話は後。とにかく荷物、降ろさして。」

「わかった。」

とにかく俺はその荷物を半分持ち、
桑本は病室に入れる。

着替えだよな、と聞き返したくなるぐらい重い。
これを全部、此処までもってきた桑本の力を疑う。
しかも腕に怪我をしているみたいなのに。

桑本は床に荷物を置き、
一回、深呼吸して、

「ひ・か・りーーーーーーーーー。」

と言いながら、ベットに飛び乗り、
七倉に抱きつく。

七倉も微笑みながら、桑本と抱き合う。
少しの間、二人は抱き合っていた。

俺はその状況を見て、正直に言葉を発してしまった。

「お前ら、レズ。」

「「ちがうわーーーー。」」

と声を揃え、俺に向かい二人で、
花瓶や枕を投げつけられた。

桑本は七倉の方に向きなおす。

「光、うざいのは、ほっとこう。それより着替えもって来たよ。」

「ありがとう。」

「タンスに入ってるの持ってきたんだけどこれでよかった。」

「うん。」

桑本は床に置いた紙袋だけを持ち上げ、
七倉のベットの上に置く。

あれはやっぱり着替えだけなのか。
いや中にダンベルが入ってるぐらい重かったぞ。
一体、何日分の着替えを持ってきたんだろう。

そんなことを考える前に俺の着替えは。

「あの・・・。俺の着替えは・・・・。」

「そこのビニール袋に入ってるでしょ。」

床に置かれたビニール袋に、
ぐしゃぐしゃに詰め込まれた服を見て疑問に思う。

扱いがひどすぎる。
というか、何故にビニール袋。

それにズボンと服の数が合ってない。
しかもこの季節に長袖。長ズボン。

今は6月の終わり。

ひどいひどすぎる。
それに着替えを取りに行くと言った拓海がいない。

「桑本さん。拓海は・・・・。」

「用事があるって言って、
私に荷物預けてどっかに行っちゃった。」

「・・・・・・・・・・。」

拓海のヤロウ、適当にタンスから服を出して、
台所にあったビニール袋に詰めやがった。

少し考えただけで拓海の行動が手にとるように分かる。
俺が頭の中で拓海をボコボコにしていると
七倉が桑本の体をじっと見つめ。

「愛。怪我してるけど、何かあったの。」

「ちょっとね。でも心配しなくていいよ、傷も深くないし。」

「そんだけ動けるからたいした傷じゃないだろう。」

桑本が七倉に弁解してるところへ、
俺が口を挟む。

「鏡崎くん、死ぬ。」

「イイです。まだ死にたくないです。」

「じゃ、黙っててくれるかな。」

「はい。」

さっきの七倉といい桑本といい、
どうして二人とも俺を睨む時に眼の奥に殺気を忍ばせる。
俺はベットの上で考え込む。

その後、桑本と七倉は何かいろいろ話していた。

考え事をしていた俺は、
話題に載れず一人、蚊帳の外。

ベットに寝転び、窓の外を眺めながら、
桑本と七倉の話に耳を傾けていた。

話が途中で終わる。

すると桑本は急に立ち上がり
七倉に別れをつげて病室を出ていった。

七倉に事情を聞くと、
桑本はこれからSAPの仕事があるらしい。

これでまた七倉と二人になった。

さっきまでは、普通にしゃべれていたけど、
あの眼を見てから話しづらい。

病室で七倉と俺との間に沈黙が流れていると、
ナイスなタイミングで病室に看護婦さんが入ってきた。

「まだいたんですか。
退院許可とっくに出てますよ。」

「・・・・・・・・・。」

何を言い出すこの看護婦は。
入ってきたとたん、まだいたんですかって・・・・・・。

退院許可が出てる。
俺の頭ではこの看護婦が何を言いたいのか理解できない。

助けを求め、七倉を見ると、
七倉も混乱ぎみ。

俺は真実を確かめるべく看護婦さんに聞いてみた。

「あの・・・・・本当ですか。
後三日は入院してないといけないんじゃないんですか。」

「後三日もですか。お二人は今にでも退院できますよ。」

看護婦は笑いながら、
答えを返してくる。

「じゃ、退院します。」

俺は即決で退院を決めた。
七倉も俺の後に続き、躊躇いがちに聞く。

「私も良いですか。」

「どうぞ。」

看護婦さんはまた笑って返してくる。

俺たちはすぐに仕度をし、
退院届けを出し病院を退院した。

大量の荷物を持ちながら、
アパートへ二人で帰る。

帰り道、
やたらと周りの人間が俺たちを見てくる。

七倉は不思議がり、

「仁くん、何か私たちやけに見られてない。」

「俺がこんな格好してるからじゃないのか。」

「そうかな。」

だって六月のめちゃくちゃ暑い日に、
長袖、長ズボン。

いやでもおかしく思うだろう普通。

俺は周りの眼なんか気にせず、
アパートに向かった。

アパートに着き、
落ち着く自分の部屋で、タバコに火をつける。

タバコに火をつけ吸わずに、
持って帰ってきたビニール袋に入れていた六刀を机の上に置く。

タバコをまた持ち、吸いながら着替えていると、
ノックもしないで七倉が部屋に入ってきた。





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七倉は土足で俺の部屋に入り、
息を切らしている。

息を切らす距離ではない。
だって七倉の部屋は隣の部屋だ。

「七倉、土足で部屋に入るなよ。」

俺は七倉と顔を合わせずに言った。

「そんなこといいから、テレビつけて。」

七倉に顔を向けると、
七倉の眼はいつになく真剣だった。

俺はタバコの火を消し、
仕方なくテレビをつける。

テレビをつけると、特別緊急ニュースがやっていた。

テレビには俺と七倉が映っていた。
犯罪者として。

テレビのボリュームを自然とあげる。
キャスターが紙に書かれた文章を噛むことなくすらすら読んでいる。

「今日、都内の病院から出て行く二人を目撃したとの情報が入っています。
近所の方はくれぐれもご注意ください。」

俺の悪い頭では、もう理解できない。

「どういうことだよこれ。」

傍にいた七倉をなぜか問いただしてしまった。
七倉も知っているはずが無いのに。

「わからない。とにかく此処にいたら危ない。
このアパートに入っていくのをたぶん皆見てただろうし。」

冷静になり、七倉の言葉に頷く。

帰って来た時の近所の人の眼は、
そういう意味で見てたとようやく理解できた。

そこに呼び鈴が鳴る。

ピンポーン

「鏡崎仁さんいるんでしょ。警察です。
出てきてください。出てこないなら、ドア開けますよ。」

俺たちが出て行く暇もなく、
警察が中に入ってくる。

「これはこれは。貴方、七倉光さんですね。ちょうどいい。
貴方たち二人を殺人容疑の罪で逮捕します。」

とっさに机の上に置いておいた、
六刀を手にとる。

「抵抗すれば、罪が増えますよ。」

警察から警告。
そんなこと言われなくても分かっている。

でも自分が捕まることに納得できない。
確かに人を殺した。

でも、それは向こうから仕掛けてきた殺し合い。
殺らなきゃ殺られてしまう。

そんなことも知らないで警察は・・・・。

しかも俺たちはSAP。
政府公認の暗殺機関じゃないのか。

疑問は徐々に怒りへと変っていく。
すると外から銃声が鳴り響く。

「なんだ。どうした。」

警官が部下に聞く。

「外に銃を持った男が発砲しました。」

「何。まだ、仲間がいたのか。
仲間もすぐに逮捕だ。」

警官は部下を促す。

俺はその隙に、ダガーをベルトから抜き、
姿勢を低くする。

警官は腰から拳銃を抜き、
俺に向かって構える。

「動くと撃ちますよ。」

俺はその場に似合わない微笑みを浮かべた。

「動くのが見えたらな。」

俺は姿勢を低くしたまま、
床をけり、そいつの心臓目掛けて突進し、
ダガーをを突き刺す。

警官は避けることもできないで、
そのまま、俺に刺された。

警官の口から血がこぼれ出る。
その血が着替えたばかりの俺の服を染めていく。

「よくも警部補を。」

なんて言いながら、
そいつも俺に向かい銃を構える。

俺は片足でその構えた銃を蹴り飛ばし、
ナイフを抜き、そいつに突き刺す。

あと10人。

皆、銃を抜く。
俺はもう一本のダガーを一人の警官の頭に向かい投げる。

それは見事に頭にあたり、
その警官は頭から血を噴出し倒れた。

あと9人。

俺はダガーを投げた後、走り、
両手にナイフを持ってその二人の間をすり抜ける。

ナイフは二人の顔に当たり、
眼の下から血を飛ばしながらもがく。

俺は後ろから二人の頭にナイフを入れる。
それで死んだ。

あと7人。

ナイフの数は残り一本。
どうしようか迷った時、床に落ちた銃が足にあった。

俺は落ちている銃を拾い、
残りの警官に向ける。

残っている警官は皆脅えていた。
大人なのに。
銃を構えようともしない。

俺は銃を構え、発砲する。

あと6人。

リボルバーを引き、発砲。

あと4人。

残りの警官に迫りながらも、発砲。

あと3人。

逃げようとする警官に向かい、発砲。

あと2人。

逃げようともしない脅えきった警官に、発砲。

あと1人。

一人必死に、まだ銃を構える警官に、発砲。

しかしそこで弾切れ。
弾の無くなった拳銃を捨てる。

その警官はまだ銃を突き出し構えている。
だから、俺は最後に残ったナイフでその突き出した手を切り落とした。
そして、顔にナイフを突き刺す。

あと0人。

部屋にいる警官をすべて殺し切った。
七倉は部屋の真ん中で座り込んでいる。

俺は一本ずつダガーとナイフを回集していく。
突き刺したダガーやナイフを抜くたび体に血が飛び掛る。

回集した六刀をベルトにしまう。
七倉はまだ座り込んでいる。

「七倉、いくぞ。」

何も言わずまだ座り込んでいる。

「七倉。」

「う・・・ん・・。」

ボーッとしている七倉の手を
引っ張り、外に出る。

そこには何十人もの警官がいた。
警官の数に虫唾が走る

何十人もの警官に囲まれた中央に拓海がいた。
拓海が俺たちに気づく。

「早く、逃げて。この場は俺が何とかするから。」

「当然だろ。」

俺は拓海を睨む。

「はいはい。」

拓海は悪態つきながらも腰から銃を出し、
迫ってくる警官に向けて容赦なく撃ち放つ。

「七倉、すぐに準備しろ。」

「・・・わかった。」

七倉は何かに戸惑っているような感じがしたが、
今はそんなことを気にしてる場合じゃない。

一刻も早くこの場から離れないと。

俺も死体が転ぶ部屋に戻り、死体を踏みつけながら、
ポケットにタバコとあり金を詰め込む。

上からローブを着て、
もう戻ってこれないかもしれない部屋に別れも告げず、
部屋を後にする。

七倉はまだ用意が出来てないのか、
まだ表に出て来ていない。

俺は七倉の部屋のドアを叩く。

「早くしろ。」

「もう行く。」

ようやく部屋を出てきた七倉もSAPのローブを着ている。
背中にはちゃんと金剛棒を背負っていた。

「行くぞ。」

「うん。」

俺は両手にナイフを持つ。
七倉は金剛棒を構える。

正面から拓海のいるところに向かい、
走りながら、警官たちを斬り捨てて行く。

簡単に拓海のいるとこまで来た。
でもそこで止まらずに走って行く。

すれ違いざまに言葉をかわす。

「死ぬなよ。」

「仕事だから死ねないよ。」

お互いに微笑み合うが顔はあわせない。
俺たちは眼の前の警官に向かって走って行く。

警官たちの群れを抜け、
そのまま走って行く。

七倉も俺の後に続き走っている。

当ても無く走っていると学校が見えた。
そのまま学校に向かい走っていく。

正門の壁を二人で乗り越え、
校舎内に逃げ込んだ。

三階まで上がり、
三階の廊下に二人して座り込み呼吸を整える。

パトカーが学校の前を通り過ぎていく。
何とか巻けたらしい。

三階の廊下に寝転がる。
すると七倉がしゃべりかけてきた。






○○○○○






「なんとか逃げ切れたね。」

「あぁ、大丈夫か。」

「うん。」

寝ながらも七倉のことを気にする。

人のことを気にしているが、
俺の体はそんなことを気にする余裕すらない。

体から汗が止まらないし、
まだ息も整わない。


あぁ、疲れる。しんどい。


すると七倉が急にとんでもないことを聞いてきた。

「どうして仁くんは、SAPに入ったの。」

「どうしたんだよ急に。」

「ちょっとね。嫌だったら話さなくても良いよ。」

「拓海に救ってもらったから。
助けてもらった代わりに入った。それだけだ。」

「そうだったんだ。」

「七倉は。嫌だったら話さなくても良いけど。」

「実は私ね・・・・。」

七倉は自分のことについて初めて話し始めた。
それは最初で最後かもしれない。

それは七倉が幼い時の話。

七倉の実家が在るのは、もちろん言うまでもないがこの町。
七倉は、この町で生まれ、この町で育った。

七倉の家庭はどこにでもある平凡な家庭。
七倉の家族もどこにでもいる平凡な家族。

お父さんがいて、お母さんがいて、
お兄ちゃんがいて、お姉ちゃんがいた。

その五人家族の中に七倉は生まれた。
一人だけ能力を持って。

七倉も最初は自分に、
能力があるなんて思いもしなかったらしい。

当たり前と言えば当たり前。
家族で一人だけ能力を持っていたのだから。

仲良く家族五人で、
何事も無く平凡だけど幸せな時間をすごしていたらしい。

それで七倉が七歳になったある日、
珍しく夜遅くに誰か尋ねてきたらしい。

七倉は隣のおばさんが回覧板でも持ってきたと思い、
何も気にしなかったらしい。

するとその誰かを出迎えに行ったお母さんが、
なかなか戻ってこない。

不思議に思ったお父さんが見に行こうと思い、
椅子から立つと家中にお母さんの悲鳴が聞こえ次の瞬間。

銃声が響きわたった。

お父さんは急いで居間を出て行った。
私もその後にくっついて行く。

するとそこには、頭を銃で打ち抜かれ、
脳みそを床に撒き散らして倒れているお母さんがいた。

その光景を眼にした私は思わず叫んでしまった。

「お母さん。」

その声に反応した黒いローブを着た誰かは、
こちらの方を見て、微笑を浮かべていた。

誰かはズカズカと家に勝手に入ってくる。

私とお兄ちゃんとお姉ちゃんは、
お父さんに手を引かれ、逃げる。

誰かは家の中を荒らしながら、
私たちを追い詰めていく。

行き止まりだ。

もう逃げられる場所はない。
誰かは足を音を立てながら徐々に迫ってくる。

誰かが私たちの眼の前に立ち、
銃を構える。

お父さんは私たちの前に立ち、
自分を盾にして、私たちを守ろうとした。

しかし、そんなお父さんを、
誰かは躊躇なく射殺した。

お父さんの背中から血が噴出し、
私は全身をお父さんの血で染めていた。

誰かはまだその構えた手を下げない。

壁際に固まる私たちを
お兄ちゃんから順に撃ち殺した。

お父さんが殺され、お母さんが殺され、
お兄ちゃんが殺され、お姉ちゃんが殺された。

残るは私だけ。


助けを呼べなかった。


助けてもらう人間が死んだから。

私は一人、がたがた振るえ、
声も出さずに座っていた。

誰かが私を見て、こう言い放った。

「いつか貴方が大きくなったら、SAPに入って、
私を殺しに来なさい。」

言い放った後、
その誰かは私を殺さずに家から出ていった。

その言葉の意味はわからない。
自分を殺しに来いと言うその人の考えがわからない。

でも、一人になった家で、
死んだ家族に向かって誓った。


”私が皆の復讐をすると”


そうして自らの力でSAPを見つけ、
入るのを決意したらしい。

そして今の七倉がいる。

七倉の入った理由を聞いて、
俺がしゃべろうとした時、階段を上がってくる足音が聞こえた。






第二章   完


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