私は仁くんの愛に向かって走って行く後姿を見て、 みかんに振り返った。 仁くんは私のために肩を貸してくれてる。 愛が私の邪魔をしないように愛に向かって行ってくれてる。 仁くんだって愛とは戦いたくないはずなのに。 私は自分の決まりを守らないと。 "家族の復讐をする" そのためにSAPに入ったんだから。 そのために今まであらゆる人を殺してきたんだから。 私はこの女を殺す。 家族のために。 そして・・・・・自分のために。 私は女を睨みつける。 みかんは私に向かい微笑みを浮かべる。 「そんな眼をしても無駄よ。貴方に私は殺せない。 そもそも経験が違うわ。どうせなら愛みたいにかわいく笑いなさいよ。 その方が死んだ時に綺麗に見えるから。」 「私には経験がない。 けど、 何度も頭の中で貴方を殺してるわ。」 みかんが顔を歪める。 「やっぱりあの時、殺しとくべきだったかな。」 「あの時、貴方が私に言った言葉覚えてる。」 あの時みかんが言った言葉。 "・・・・・・・私を殺しに来なさい・・・・・" 今でも何故そんなことを言ったのかわからない。 でも、殺しに来いと言われたからには相手を殺さないと。 「覚えてるわよ。でもそれは・・・・」 「じゃ、死んで。」 私はみかんの言葉を最後まで聞かず、 地面を蹴り、みかんに突っ込んでいく。 みかんは銃を構え、躊躇することなく銃弾を放つ。 私は金剛棒で放たれた銃弾を見事に弾いた。 飯島先輩の時と同じ。 銃弾に掠りさえすれば、 その速さゆえ銃弾は逸れていく。 その時の経験の御蔭か眼が弾の速さに慣れている。 そのまま向かって行こうとした瞬間、右肩に襲撃が走る。 その場で足が止まってしまった。 ローブをめくり肩を見る。 そこには弾の大きさ穴が開き、 血が滲み出ていた。 ありえない。 弾はこの眼でしっかりと捕らえ、ちゃんと弾き飛ばした。 金剛棒にも少しへこんだ後は在る。 なのに何故。 「貴方、ほんとうに解かってないみたいね。 経験が違うって言ったでしょ。」 銃声は確かに一発しか聞こえなかった。 その一発は確実に弾いている。 なのに弾は私の体を確実に貫通している。 じゃ、弾は二発あった。でも銃声は一発。 しゃがみこむ私に彼女は笑った。 「ほんとうに解からないみたいね。 悪いけど貴方は弾に集中しすぎなのよ。 私の行動を全然見てないわ。」 解からない。何が言いたいのか。 どうやったのか解からない。 あの銃にはサイレンサーなんて便利なものはついてない。 ならどうやって。 「早く立たないと撃ちゃうけど。」 私はしゃがんだまま後方に飛ぶ。 みかんは撃つと言いながらも、 撃たずにその様子を見ているだけだった。 みかんは私に微笑みかける。 でも、そんな事はどうでもよかった。 私の中には三つの想いで一杯だったから。 一つ、彼女を殺す事。 二つ、どうやって彼女は私を撃ったのか。 三つ、本当に殺せるのか。 二つ目を解決しない限り一つ目は果せない。 二つ目を解決しない限り、三つ目が私を挫けさせる。 私は傷口も押さえず、その場に立ち尽くして、 どうやって私を撃てたのかを必死で考えていた。 するとみかんは私に向かい発砲。 当然の行動だ。 相手が動かないんだからそれを撃つのは当然。 突っ立て考えている場合じゃない。 すぐに次弾が飛んでくる。 私はまた弾を見極め金剛棒で弾き飛ばす。 でも弾が飛んでくる速さが尋常じゃない。 相手の拳銃はリボルバータイプの拳銃。 こんなにも早く次弾が撃てるはずがない。 眼で追うのも精一杯の早さ。 弾にして、もう五発は弾いた。 普通あのタイプに入るのは弾の数は六発。 次が飛んでくれば終わり。 弾を込める隙を狙えば殺せる。 私はそう思い、次弾を弾く準備と走る準備を整える。 六発目が飛んできた。 私はそれを軽々弾き飛ばし、走って相手に向かう。 でも甘かった。 みかんは撃った後、すぐさま銃を立て、 シリンダーを同時に出し、空になった弾を地面に落とす。 そして、ポケットにしまっていた弾を空中に投げ、 空中ですべての弾をシリンダーに込めた。 銃を手首のスナップを使って動かし、 シリンダーを元に戻す。 そのまま地上にいる私に向かい連弾を放つ。 みかんのトリガーを引く速さは凄かった。 まさに秒速。 私はまた止まり、 下がりながら空から降る銃弾を防ぐ事しか出来なかった。 みかんは着地した後も私に向かい撃ち続ける。 私はひたすら飛び交う銃弾を弾いてるだけ。 今度は完璧に弾いていたはずの弾が、 右足を掠っていった。 掠った瞬間、崩れそうになるが、 金剛棒を地面に突き、何とか立っている。 どうして・・・・・・・・・。 私はちゃんと見極めて弾を弾いている。 なのに弾はどうしても私の体に当たる。 ・・・・・・・・・どうして。 私が金剛棒を杖代わりに立っている間にも、 彼女は余裕で弾を補充している。 自分の中にもう無理だというもう一人の自分がいる。 私は無理でもきっと仁くんが、 私の代わりに復讐してくれる。 私が無理でも私と同じ目に合った誰かが、 きっとコイツを殺してくれる。 そんな考えが頭をよぎる。 だって私じゃどうあっても勝てない。 みかんをどうやっても殺せない。 そんな時、死ぬ寸前のお父さんの後姿が蘇った。 私をあの時、必死で守ってくれたお父さん。 私は今、そのお父さんの行動を台無しにしようとしている。 私はゆっくりと金剛棒に頼らず立つ。 私は銃でこの心臓を撃ち抜かれようが、 最後にアイツを殺せれば、文句はない。 アイツさせ殺せば、どうなっても良い。 私はそのために、そのためだけに生きているんだから。 私は金剛棒を強く握り締め、 みかんに向かい走って行く。 「懲りない子。」 みかんはボソッと呟き、銃を構え、放つ。 私は飛び交う弾を見ずに、 適当に棒を振り回し弾を弾いていく。 何発か体を掠っていくが気にしない。 もうこの距離まで迫ってきて、 止まることなんて許されない。 銃弾がまた体を掠って行く。 今のがちょうど六発目。 さっきみたいに弾を補充するために飛ばれても、 この距離なら相手を叩き落せる。 私は軽く飛び、金剛棒を振りかぶる。 そこで私は考えもしていなかったもの見た。 みかんは左手を後ろに手を回し、 サイレンサー付きの赤銀のオートマの銃を私に向け放った。 その弾は私の脇を掠った。 私は地面に落ち、その場で倒れこむ。 「どう。これで解かったかしら。 弾が二つ同時に飛んでいくんだから、もちろん銃も二つある。 一つを弾いても二つ目がある。一発目は見せ弾。二発目が本命。 一つの弾を見ていてもその脇に隠れた弾は見えない。 だから言ったでしょ。経験がちがうって。」 「卑怯者。」 「あら。殺し合いに卑怯も何もないわよ。 どうしたら相手を殺せるか、それだけが問題のはずよ。」 確かにそうだ。 卑怯者かどうかなんて関係ない。 相手を殺せればそれだけで良いんだから。 みかんは私に向かい二丁の銃を構える。 「ようやくこんなに近くまでこれたのに、 このまま死ぬなんてかわいそうね。 まぁ、来世で私を殺せる事でも祈ってなさい。 私が生きてるかどうかは解からないけどね。」 「うせぇんだよ、ババア。」 私は体を瞬時に起し、金剛棒で右手の銃を叩き落す。 脇の傷が痛む。 左手の銃から弾が放たれる。 それは私の右股を貫通した。 でもそのままの左足でその銃を蹴り飛ばす。 あっちこっちが痛むが、金剛棒でみかんを潰しにいく。 みかんにもう武器はない。 これで私はみかんを殺せる。 これで復讐を終わらせる。 そう思い、金剛棒を今まで以上に強く握り締めた。 でも次の瞬間、みかんは笑い、 私に向かってくる。 私はそのまま振り降ろす。 金剛棒はみかんを捕らえることなく、 地面に振り落とされた。 みかんは軽くその金剛棒をかわし、 私の右腕を持って金剛棒ごと私を投げ飛ばした。 私は壁に叩きつけられる。 壁に叩きつけられた衝撃で自然に咳が出る。 すると口から血が噴出した。 呼吸するたびに口に残った血が逆流する。 壁に叩きつけられた痛みより、 痛みがあるのが腕。 ちょうどみかんに掴まれた辺りに激痛が走っている。 ローブをめくり、右腕を見ると腕が腐っていた。 腐っているという表現は大体過ぎる。 見たと通り言うと、 そこの部分の皮膚だけが純粋な茶色に染まっていて、 骨が軽く見えている感じだ。 腕の筋肉はなくなり、 おばあちゃん腕をもっと細くした感じだ。 右腕に全然力が入らない。 金剛棒を持ち上げる事すら許されない状況だ。 みかんは私が弾き飛ばした銃を拾い集めて、 私の方に顔を向ける。 「どうかしら。私の能力、"腐蝕"の痛み、醜さは。 貴方、私はSAPの人間よ。あんな近距離で大振りしちゃ、 やられるに決まってるじゃない。」 「うるさい。」 「人の意見も聞けないようじゃダメね。 私も疲れたしそろそろ終わりにしましょ。」 その直後、爆風が私たちを襲った。 それはあまりに強く、近くで仁くんと戦っている愛が、 爆弾を大量に使ったせいだと理解できた。 私はこの煙を利用しようと思い、急いで立ち上がり、 金剛棒を左手で握り締め、みかんがいた場所に向かって走って行く。 すると影が見えた瞬間、銃弾が飛んできた。 左手に持った金剛棒で弾きながらもその影に向かい走って行く。 頬、左腕、右足、腹、肩、と弾いていても弾は私の体を掠っていく。 弾が掠るたび膝を着きそうになるが寸前で踏ん張り、 走って行く。 煙が晴れていく。 みかんは両手に銃を構え、私に向かい放ち続けていた。 六発目が足首を掠る。 それも何とか持ちこたえる。 みかん放てる弾は、オートマに残った二発。 オートマに込められる弾は八発が限界。 私は復讐するためいろんな銃の種類について調べてきた。 銃は使わないが知識ならいくらでもある。 だから解かる。 後二発を乗り切れば、警戒するのは相手の能力だけ。 そこまで行けば私にだって、 相手に致命傷となる一撃を与えることが出来る。 七発目が飛んでくる。 左手に力を込め金剛棒で思いっきり弾を弾き飛ばす。 残りは一発。 私は全力で走って行く。 距離にして三十メートルぐらい。 その間に最後の一発が飛んで来る。 それを弾き飛ばす事もしなかった。 それは見事に私のお腹に直撃した。 私には後みかんを殴り倒す力しかない。 腕は痙攣しはじめている。 私はお腹に弾を喰らおうとも、 倒れることなく走っていく。 みかんはリボルバータイプの銃を手放し、 ポケットからオートマのマガジンを出す。 それを込められたら私は終わり。 もうこれ以上、弾をまともには浴びれないし、 血だってかなり出て、腕は痙攣。 これは最後の賭け。 どっちが先に相手に一撃を与えられるか。 みかんは使い切ったマガジンを地面に落とし、 次のマガジンを込めにはいる。 これは最後の賭け。 勝てるはずのない最後の賭け。 私が残り十メートル全力で走るのと、 マガジンを入れるのどちらが早いか。 そんなものは端からわかっていた。 でも私にはもうこれが最後でないと死ぬから。 私は銃にマガジンが込められても、 止まらずに走った。 みかんは両手でしっかりと銃を握り、 私に向かい標準を合わせている。 これで私も死んじゃうのか、 と諦めながらも必死に走っていると、 「そのまま全力で走れ。」 と後ろから小さい声が聞こえた。 私はその声のまま全力で走った。 後ろを振り返ることはしなかった。 振り返らなかったのは、 振り返っても誰もいるはずがないとわかるから。 その声がどことなくお父さん声に似ていたからかもしれない。 私は全力で駆けていく。 その距離わずか二メートル。 みかんが私に向かい銃弾を放った。 それと同時に私の上を何かが飛んで行った。 私はそれを力強く弾いた。 しかし、その弾は私の右腕を打ち抜いた。 みかんをもうボコボコに殴ることはできない。 殴れても四発が限界。 それでも良い。あいつを殺せるなら。 私は倒れず走った。 すると私とみかんの間に私の上を飛んだ人物が着地した。 両手には血のついたダガーが握られていた。 その人物はゆっくりと顔を上げる。 「仁くん。」 そう言い、仁くんに駆け寄ると、 「わああああああああああああ。」 仁くんの向こうで、みかんは両手を地面に落とし、 腕から大量の血を流しながら叫んでいた。 「此処からは七倉がコイツを殺す番だ。 俺はもう肩を貸さない。けりをつけろよ自分で。」 仁くんはそう言い、六刀を仕舞い、 タバコに火をつけながら、背を向け歩き出した。 「ありがとう。」 背中に向かい、感謝した。 仁くんは振り返らず、片手を挙げながら、 離れていった。 私は腕を失ったみかんを睨む。 気を抜けば倒れてしまいそうな体を 復讐できるという復讐が果たせるという 今までの恨みと達成感で精一杯動かし、 みかんに向かい金剛棒を振りかぶる。 「ようやく死ねるのね。」 さっきまで叫んでいたみかんが座り込み小さい声で呟いた。 私はみかんの頭に向かい金剛棒を振り落とした。 えげつない音が鳴る。 金剛棒をあげるとみかんの顔は変形し、 みかんかどうか解からなくなっていた。 私はもう一回振りかぶる。 「お父さんの分。」 そう言い振り落とす。 今度は心臓。 「お母さんの分。」 そう言い振り落とす。 今度はお腹。 「お兄ちゃんの分。」 そう言い振り落とす。 今度は左足。 「お姉ちゃんの分。」 そう言い振り落とす。 今度は右足。 「最後が私の分。」 そう言い振り落とす。 最後はもう一度顔を。 「終わらせたよ。みんな。」 金剛棒が私の手から勝手に離れていく。 座り込み空を眺める私の眼からは自然と涙が流れてきた。 空には星空が見えるのに滲んでよく見えない。 わたしは踏ん張り立ち上がろうとした瞬間、 意識がなくなった。 @@@@@ 七倉はみかんの体を これでもかと言わんばかりに叩き潰している。 何度も。何度も。何度も・・・・・・。 その度に嫌な音が響いてくる。 それは決して生きている人間からは聞きたくない音。 ・・・・・・・・・・・・その音は骨が砕け、内臓や脳が潰れる音。 それでも七倉は潰し続ける。 それほど憎んでいたんだろう。 俺には想像の出来ない領域。 俺の親はもともといないし、 親代わりの大家さんも今はモナコでのんびりしていると思うから。 俺はタバコを吸いながら、 その光景から眼を逸らすことはなかった。 それは七倉の悲しみや憎しみの行動だから。 七倉が自分の決まりをようやく守れた証拠だから。 七倉の手が止まった。 するといきなり七倉は座り込み倒れた。 「どうした、七倉。疲れたのか。」 と気楽に声をかける。 しかし、返答はない。 タバコを捨て、急いで七倉の元に駆け寄る。 「七倉、七倉。」 呼んでも返事がない。 七倉の体を見ると、 あっちこっち穴だらけで血が流れ出ていた。 屈み込み、急いで脈を確認する。 ・・・・・・・・脈はある。 でもかすかにあるぐらいだ。 俺は応急処置とかそんな器用な事が出来る人間じゃない。 何をすれば良いのかまったくわからない。 どうしようかテンパっていると、 いきなりそこに猛スピードで黒い車が十台ぐらい走ってくる。 その黒い車は俺たちの十メートル手前ぐらいで止まり、 黒いスーツを着たガタイの良いヤツが何人も降りてきた。 数えられるだけでも四十以上はいる。 そいつらは迷うことなく俺たち向かって歩いてくる。 俺はその場に七倉をそっと寝かせ、 立ち上がり、ダガーを両手に持つ。 それでも怯むことなく俺に向かってくる。 その中の一人が先陣を切って走ってくる。 俺はその場に立ち尽くし、 相手が来るのを待った。 あくまで俺は受けに回った。 そいつは走りがら俺に近づき、立ち尽くす。 ソイツはサングラス越しに俺を睨んでいた。 俺も見上げながら睨みかえす。 するとソイツは何も言わずに、 左ストレートを放ってくる。 だが、そいつの動きは今まで戦ってきた中で一番遅い。 俺は軽くかわしその突き出された左腕を斬り落してやった。 そいつは顔を歪めながら腕を押さえ、後ずさりしていく。 俺はあえてソイツに止めをささなかった。 何十という人間を相手しなきゃいけないのに 一人にかまっている暇はない。 それを見ても、黒いスーツの集団は恐れることなく、 次々に走り出してきやがる。 向かってくるヤツを動くことなく、 一人、また一人と斬り倒していく。 でも、向かって来る勢いは、 いまだ少しも衰えていない。 俺はうざくなってきた。 俺はその場を離れ、 その集団に飛び込んでいく。 眼、腕、足を切り裂く。 今はそいつらの戦闘意欲を下げるだけで手一杯だ。 それでもこいつらの数は減らない。 というか増えてる。 車が次々に来て、 そこから黒いスーツのヤツがまた降りてくる。 「もう勘弁してくれよ。」 つい独り言が出てしまう。 それでも走って行く。 七倉をあのままほっておく事も出来ないし、 だからと言ってこいつらを一撃で吹っ飛ばし、 この場をどうにかすることも出来ない。 良いアイデアも見つからないし、 とにかく今は数を少しでも少しでも減らそう。 集団に飛び込み、 首、手首、腕、足を斬り落とす。 つい力が入り、一人一人に時間をかけてしまった。 周りをみるといつの間にか囲まれている。 しまった。 何も考えていない。 周りから一斉に俺に襲い掛かる。 俺は右から向かって来るヤツだけに意識を集中させる。 どこか一つに穴を開け、そこから反撃する。 俺の右にいるソイツの顔面に蹴りを食らわし、 その隣にいるやつらの首を狙いダガーで切り裂く。 小さいが穴が出来た。 そこで一端引き、そこから固まったそいつらの体を切り裂いていく。 何とか囲まれた状況からは抜け出せた。 でもその数を相手にすることには、 何も変わってない。 黒いやつらは自衛隊みたいに整列している。 前線にいるやつらと睨みあう。 するとそこに銃声が鳴り響いた。 銃弾は俺の傍をとおり前線にいた二人の眉間に、 見事に的中していた。 銃声の方を見る。 そこには両手に銃を持ち、SAPのローブを着た、 拓海の姿があった。 「またか。クソウゼェ。」 「遅いぞ。拓海。」 「数が多くて、ちょっと時間がかかった。」 「言い訳は後で聞くよ。とにかく何とかしろこの数。」 「わかった、わかった。」 拓海は両手の銃を構え、 銃の連撃を放つ。 その量は二丁の銃から放たれる弾の限界を超えている。 道にあふれた黒のやつらが、前から徐々に倒れていく。 俺も銃弾が飛び交う中、出来るだけの数を斬っていくが、 それでもなかなか数が減らない。 「仁君、ちょっと退いてて。邪魔だから。」 「何か秘策でもあるのか。」 「在るよ。」 「じゃ任せた。」 俺は眼の前にいる連中を切り裂き、 拓海のところへ戻る。 「じゃ、行くよ。」 拓海は銃を仕舞い、突然近くに落ちてる石を拾った。 「拓海。殴るぞ。」 「良いから、いいから。」 拓海は片手に石をもち、 指先でその石を弾いた。 すると石はものすごいスピードになって、 連中を二、三人貫通した。 「やるね。」 「これが俺の能力”直弾”だからね。」 「じゃ、援護よろしく。」 「はいよ。」 おれは再びダガーを握り、 その集団に向かい走って行く。 背後からは、石弾と銃弾が入り混じり、 飛んでいく。 集団に向かって走っていくが、 前にいるヤツからバタバタ倒れていく。 さすが俺一人でやってるより断然早い。 俺も負けじと次々に惨殺していく。 すると黒の集団の後ろから声が響く。 「もういい。」 真ん中の道が綺麗に開き、 集団は一斉に跪き、頭を下げる。 「御久しいぶりです。小沢代表、大泉総理大臣。 SAPの幹部および処理役を仰せつかっています。 森 拓海といいます。」 後ろから声がした。 後ろを見ると拓海も頭を下げていた。 小沢と大泉はゆっくりと歩きながら、 前に出てくる。 @ 大泉 亮太 白髪交じりの髪で髪は綺麗に整えられている。 紺のスーツを着ていて、胸にバッチを付けている。 今の内閣総理大臣。 小沢 真一 自民党の代表をしている。 大泉のいわば右手。 綺麗な黒髪で、コイツも髪を綺麗に整えている。 茶色のスーツを着て、大泉と同じバッチを付けている。 @ 「君が森様の御子息か。随分と大きくなったもんだ。」 俺が口を挟む。 「誰だか知らないがお前がこの集団のボスか。」 「君、失礼だぞ。」 「悪いな。生まれてから俺はずっとこういう性格なんで。」 「クズが。」 そう言われた瞬間、俺は全力で走り、 そいつの首を跳ねようとした。 でも、それは俺の後方にいた筈の 拓海によって止められた。 「拓海、止めるな。でないとお前も殺すぞ。」 「悪いけど譲れない。こいつらは俺の獲物だから。」 拓海の顔は俺を見ず、小沢たちを見ていた。 拓海の眼は鋭く小沢たちを睨んでいた。 「森くん今の発言は反乱発言ですか。」 「黙れ小沢。お前と話はしてない。引っ込んでろ。」 拓海の眼はさらに鋭くなった。 「なんだと。」 大泉が小沢を睨みつける。 「小沢君、森くんの言う通りだ。 子供を失った悲しみは解かるが、他の人に八つ当たりをしてはいけない。 今は君の出る幕ではない。」 「失礼しました。」 小沢は俺たちを睨みながら、 一歩だけ後ろに下がった。 「ところで森くん。君たちにはいきなりで悪いんだが、 素直に死んでもらえるかな。私たちもこれ以上部下を失うのは心ぐるしい。」 「言いたいことはそれだけですか。」 拓海が大泉から顔を逸らし下を向く。 「そうだ。」 すると拓海はいきなり銃を取り出し、 手のひらの上に乗せた。 「拓海。」 「さすが森様のご子息だ。 解かっていらしゃる。」 「ウゼェ、シネ。」 すると拓海は手の上に乗せた銃を指先で、 さっき石を弾いた時と同じように弾いた。 すると銃自体が高速で飛んでいき、 銃弾と化した。 何の抵抗もなく、大泉は跡形もなくなった。 俺は拓海が銃を弾いたのと同時に走り、 小沢の首をダガーで落とした。 「仁くんソイツは俺の獲物だって言わなかったけ。」 「すまん。あいつの顔があまりにもムカついて。」 「良いけどね。」 拓海の眼は穏やかだった。 さっきの鋭さを感じさせないぐらいに。 俺はその顔を見てほっとし、 黒の集団を挑発した。 「リーダー死んだけど、まだ死にたいやついる。」 黒い集団は明らかに困惑していた。 リーダーを失い、命令をしてもらえなくなって。 お互いを見ながら、かなり困惑している。 「いいから、帰れ。次の代表にでもどうしたらいいか聞きに行け。」 拓海が銃を向けながら、言い放つ。 黒の集団は拓海が言った通りに、 すぐさま車に乗り込み去っていった。 俺は拓海の方に振り返る。 「拓海、悪いけどすぐ七倉を見てやってくれ。」 「光ちゃん。どうしたの。」 「説明は後だ。」 拓海は七倉を見るとすぐさま応急処置をし始めた。 俺はタバコをすいながら、すべての事を説明した。 桑本のこと。みかんのこと。七倉の過去も。 「大変だったね。」 「まぁな。拓海さ、法律ってなんだ。 何のためにある。」 「いきなり難しいこと聞くね。」 「いいから、答えてくれよ。」 「そうだねぇ・・・・・・・・・。」 拓海は七倉に包帯を巻きながら考え込んでいる。 すると急に手を止めた。 「法律は生きてくためのリスクなんじゃないかな。 何かをしようとすればリスクが伴う。 もし仁くんがもし彼女を作るとしたら何らかのリスクが発生する。 彼女に話しかけたりするのにはリスクを伴うでしょ。 それと一緒で生きてくためのリスクが法律にあたるんじゃないかな。 俺はそう思うけど。」 「そうか。」 「仁くんは。なんだと思う。」 「俺は・・・・・・・・・・・。 法律はただの基準だと思う。 人を殺してはいけないと総理大臣や裁判官なんかが決めていても、 その決めてるヤツが人殺ししてるんだから。 そんなもんだと思う。 だから自分の中のルールも基準にすぎないと想う。 自分に余裕があるときは基準に従うし、 ない時は基準も糞もないだろう。 普段は信号を守ってるやつでも急いでる時は、 無視してしまうそれと一緒だろ。 今の状況を見ていてもそうとしか思えない。」 「なるほどねぇ。まぁ深く考えない方が良いよ。 この世の中、矛盾なんてつきものだからね。」 「まぁな。」 「ところで七倉大丈夫か。」 「何とか。でも、どうなるかは解からない。 血が出すぎてるから。」 「・・・・・・・・・・。」 言葉を返せなかった。 七倉は自分のルールを守った。 その守った末が死だなんて。 悲しいというかアホらしいと言うか。 なんとも言えなかった。 するとそこに声が聞こえた。 「生きていたのか。」