眼を開ける。 アァ、眼が開けられる。 眼に映るのは、天井の色。 白い天井は、綺麗ではなく、ほこりや雨漏りで黒みがかっている。 アァ、汚すぎて開けた眼を閉じたい。 音はまったくない。 隣のいかれたオッサンのうなり声を除けば。 アァ、耳が無かったらよかった。 あぁ、俺は、この天井眺めて、もう何年になるだろう。 四年目ぐらいかな。 あぁ、俺は、この牢獄と言う部屋に来て、もう何年になるだろう。 やっぱり、二年ぐらいかな。 俺のところには誰も面会に来ないし、ここ何年も誰とも会話をしていない。 まぁ、さすがにこんな人間に面会に来るやつはいない。 来るとすれば、よっぽどの暇人か、囚人に興味を抱くいかれたヤツ。 隣からは毎日のように叫び続ける狂っているおっさんの喚き声。 最初は一緒になって叫んでやろうかと思ったが、叫んでいる姿を想像しただけ、 嫌気が差した。 部屋は掃除されていないので、 毎日、どこからともなく臭い匂いがする。 {本人が掃除をしていないだけ} この部屋は来た時からなんにも変わらない。 いつもの部屋。 毎日がベットに寝ているだけの生活。 すさんでる。どう見てもすさんでる。 音楽を聴いたり、ゲームしたり、軽く友達を強請ってみたり、 タバコを吸ったり、ネットを荒らしたり、友達をボコったり、 酒を飲んだり、女の子をナンパしたり、友達を殺したり、 したい。こんなとこは二泊三日のお泊りツアーで経験するぐらいで十分だ。 毎日飯を運んできてくれるのも、むさくるしい、体が自慢の無口な野郎。 かわいい女の子ならまだ我慢出来るのに、なんであんな野郎の姿を見なきゃならない。 しかも、一日三回、朝、昼、夜。もう、うんざりする。 毎日毎日がそれの繰り返し、でもこの日はいつもと違った。 俺に誰か面会にきやがった。正直、うれしい。 やっと、この暇な日常から開放されると思うと。 面会に来たやつなんてどうでもよかった。 いっそ、会った瞬間、殺してやろうと思ったくらいだ。 とりあえず、俺は、手錠をはめられ、面会に来たヤツが待つ部屋に向かった。 まずその部屋に入って、一番驚いたのが、面会に来たヤツだった。 菅山 憲太 俺の双子の弟だ。こいつは俺より頭がよく、 有名高校に通う自殺が大好きだった弟。 こいつは、学校の寮に住んでいたため、 会うのは三年ぶりくらいである。 俺は設置された椅子に腰掛ける。 「まだ生きてたのかよ。連絡もないから、 とっくにどっかで自殺してるかと思ったよ。」 「アンタには、言われたくないよ。 人を殺すのが好きな犯罪者には」 「バラすぞ。でなきゃ、爆殺してやる。」 「お前こそ手首切り落とすぞ。」 俺の後ろにいた監視官が咳払いをする。 ふと我に返り、だるさ全開で聞く。 「何しに来た?見物か、それとも観覧か」 「アンタを此処から出しに来てやったのさ。感謝しろ感謝。」 「マジか。マジなのか。」 「いやウソ。出してあげられるわけないじゃん。」 「爆殺してやる。」 「待てよ。これから面白いことするからさ、牢屋で見守っていてくれよ。」 「わかった。ここで自殺するんだな。 今、死ね。すぐ、死ね。瞬時に死ね。0.01秒で死ね。」 「じゃ、またな双子の兄貴。」 こいつは、俺の話を完全に無視し、 部屋を出るときに、気色悪い笑いをして出て行きやがった。 あいつが何をするかは知らないが、まぁたいしたことは出来ない。 自殺が大好きなあいつだから。 俺は再び監督官に連れられ部屋に戻り、ベットで寝ることにした。 昨日は約九時間ぐらい寝ていたのに、 なぜかベットに寝転んで十分ぐらいで寝てしまった。 眼が覚めた。 二時間ぐらい寝ていただろうか。 部屋に時計がないので時間は体内時計で。 起きた瞬間、何かいつもと違う感じがした。 そういえば、狂ったオッサンの声が聞こえない。 でもそれは、オッサンが死んだから聞こえないだけかもしれない。 牢屋に来て初めて静かになった。 静かになった部屋でベットの上に座る。 なんか妙に落ち着かない。 たぶんこの部屋のBGM的存在だったオッサンの声が聞こえないせいだろう。 そのまま飯の時間まで心の中で狂ったオッサンに別れを告げながら、 今日の献立のメニューは何かと考えていた。 飯の時間になった。 考えるのをやめ、飯が運ばれてくるのを待った。 しかし、飯の時間になると言うのに誰も来ない。 いつも飯を持ってくる野郎が来ない。 いつなっても飯がこない。 時間で大体一時間ぐらい。 すると、誰か部屋に近づいてくる足音が聞こえる。 コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツ 「遅いぞ。今度遅れてみろ、撲殺してやるからな。」 「すいません。ご飯はなしです。」 いつものやつじゃない。しかし、 部屋の前は電気がついていないため誰か分からない。 「貴方はすごい鈍感なんですね。 いつまで其処にいるんですか。貴方は。」 聞き覚えのある声。でも思い出せない。 「誰だ。テメエは。」 「分かりませんか。貴方を撃った餓鬼ですよ。」 此処に来る前、俺を撃った餓鬼の顔がまっさきに浮かんできた。 「何しに来た。俺をまた撃ちにでも来たのか。」 「いいえ。貴方は、無実の人間なので助けに来ただけです。」 俺を殺そうとしたやつが助けに来るなんて想像もできなかった。 俺は半信半疑で、聞いた。 「俺の無実だとどうして分かる。」 「弟さんに会いましてね。兄貴は人殺しなんて出来る男じゃないと聞いて、 調べたら、貴方が無実だと分かり、釈放しに来たんですよ。」 「じゃ、俺は出てもいいのか。」 「もちろんです。」 俺はなかなか信用できなかった。警戒して鉄格子に近づき、開けた。 鉄格子はすんなりと開き、俺をこの部屋からようやく解き放たれた。 横のオッサンの部屋はやはり静かで、人のいる気配がしなかった。 「付いてきてください。外に案内します」 俺はうなづき、足を進める。 すると、水溜りを踏んでしまった。屋根があるのに。 でもそれは、あまり気にならなかった。 この建物はとても古く俺のいた部屋でも雨漏りがあったからだ。 ようやく電気のある所のに近づいてきた。 すると、さっきから無言で歩く少年の姿がはっきりと見えてた。 少年は振り返り、 「どうしました。さっきから黙り込んで」 と言う。その姿は血まみれで、 頭の先から足の先まで血が付いていないところがないぐらいに染まっていた。 「お前、誰を殺した。」 「邪魔な蟲を少し殺したんです。」 「もしかして此処の人間たちを殺したのか。」 「はい。一人残らず。」 「なぜだ。」 「貴方も死にますか。 そうすれば貴方もどうして死ぬことになったか分かりますよ。」 「ウザかったからか。」 「貴方はどうやら死ななくても判るようだ。そのとおりです。 貴方のことを釈放しろと言ったら出来ないといったんで全員、秒殺しました。」 「何人いたんだ。」 「30ほどですかねぇ。 いや、みんな雑魚で殺すのに時間がかかりました。 クズなら瞬殺だったんですけどね。」 「そうか」 「後を見てください。今、ライトで照らしますから。」 餓鬼はライトを出し、俺たちが歩いてきた廊下を照らす。 そこには、まさに地獄絵のような感じだった。 一般人なら必ず嘔吐してしまうぐらい惨い。 一人は顔面の中心を撃たれ、鼻がなくなり、前歯も吹き飛び、 撃たれた衝撃で面玉が飛び出、後ろの壁には脳みそが原型をなくし、 壁にへばり付いている。 一人はこめかみから撃たれたのか、目玉の半分が出て、 赤い涙を流し、鼻血も出ている。腹にも一発くらっており、 撃たれたところからは、腸が出てきている。 そんな死体が整列しているかのように 綺麗に壁づたいに並んでいる。 ライトの光が消える。 「早く行きましょう。こんなところにいても無駄です。」 「俺はいつまでも見ていたいけどな。」 「貴方に付き合ってる暇はないです。 行きますよ。表で弟さんも待ってますし。」 「あんなヤツほっとけばいいのに。」 そう言い、餓鬼と死体の並ぶこの長い廊下を歩いて行った。 一言もしゃべらずに。 外が見えてきた。 外は暗く、月明かりが綺麗に見えた。 「外にでる前にこれは返しておきます。」 餓鬼はポッケトにしまっていたナイフを渡す。 そのナイフはコイツに撃たれた時に持っていた拓海のナイフ。 「保管庫に在ったのでいちよう持って来ました。 貴方を間違って撃ったお詫びです。」 俺はそのナイフを受け取った瞬間、 餓鬼の首を狩った。 首は後ろに飛び、首からは血が、地面に置いてやる 花火のように飛び散った。 俺の上半身は返り血で赤く色づけられた。 「いつまでも、調子にのんな餓鬼が。 お前の顔見てると嘔吐しそうなんだよ。」 俺はその立ったままの死体に蹴りを入れ、倒し、 この留置所に別れを告げた。 久しぶりに外の空気を吸う。 久しぶりに吸う空気は普通で、 全然、感動しなかった。 案の定、外に待っているはずの憲太はいなく、 近くを歩いていたカップルを脅し携帯を借りた。 俺はその後アイツに連絡を取り、 迎えにこさせた。 「案外早い釈放だね。」 「どうも、ありがとうございます。それよりタバコくれよ。」 「いいよ。」 と言い、俺にマルボロとライターを渡す。 貰ったタバコにさっそく火をつけ、 留置所の壁にもたれ一服する。 「兄貴さ。それより向こうの空見てよ。面白いものを見せてあげるよ」 そういうと暗みに光るビルを指差す。 「何だよ。夜景なんかで感動とかしないんだけど。」 「いきまーす。」 すると憲太は右手に持っていた スイッチのようなものを押す。 するとビルのあっちこっちから爆発し 地面が揺れる。 「すごいしょ。」 「お前・・・・」 「何だよ。」 「お前・・・」 「だからなんだよ。」 「おれにやらせろよ。お前。 バカか。アホか。クズか。ツンボか。害児か。 ロリコンか。それともシスコンか。変態か。野蛮人か。」 「殺すぞ。」 「そうか。ならお望みどうり爆殺してやる。」 このあと、日があけるまで、 死体が散乱している留置所のまえで殴りあった。 その後、憲太の寮に行き、そこで暮らすことになった。 理由;大家さんと殺しの話で意気投合したから。 それからは、憲太が日課にしていた、楽しみを二人で時間帯を問わず、 やりにいった。 それはうざいヤツを刺殺すること。 ある日の夜、忘れられないあの女の子が、俺たちの目の前にいた。 完 死人。 約45人。 負傷者。 0人。
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